研究概要 |
子宮筋腫については、これまでに、正常子宮筋層と筋腫組織で遺伝子の発現プロファイルに違いがあることが報告されている。しかし、子宮筋腫に特異的な遺伝子発現やタンパク発現パターンは見いだされておらず、発現を引き起こす原因や筋腫の発生機序についても依然として不明である。さらに、子宮筋腫を有さない症例と子宮筋腫を有する症例の子宮筋層において遺伝子発現やタンパク発現を比較検討した報告はない。そこで、①子宮筋腫を有さない症例の子宮筋層組織、②子宮筋腫を有する症例の子宮筋層組織、③子宮筋腫組織、各組織それぞれ3症例ずつについて、Infinium Human Methylation 450を用いて、ゲノムワイドにDNAメチル化状態を解析した。①と②の間に発現の違いを認める遺伝子は認めなかったが、トランスクリプトーム解析も追加し、①・②と比較して③で発現に違いを認める625遺伝子を同定した。さらにIngenuity pathway analysisによる上流因子解析を行い、子宮筋腫で発現増減する76遺伝子を抽出し、そのうちDNAメチル化異常のある5遺伝子(EPAS1, NRG1, NR3C1, GATA2, MAPK10)を抽出した。この5遺伝子のうち、11症例において②と③でmRNA発現が異なった3遺伝子(NRG1, NR3C1, MAPK10)を検討に用いることとした。これらの遺伝子をそれぞれレンチウイルスベクターに挿入した。このベクターを不死化したヒト平滑筋細胞株に導入し免疫不全マウスの腎被膜下へ移植し筋腫化が生じるか研究中である。本研究により、子宮筋腫の進行を抑制する新規薬剤の開発および子宮筋腫の予防法の確立に向けて、in vivo筋腫形成モデルを確立することによって、まずその基盤となる子宮筋腫の発生・進展に関わる分子を明らかにできる。
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