卵巣黄体化顆粒膜細胞において、LHサージ後に発現が急激に上昇するStAR遺伝子と急速に発現が低下するCyp19a1遺伝子の調節機構に、ヒストン修飾によるepigeneticsな変化が関与し、そのプロモーター領域のクロマチン構造の変化が関与することが平成24年の研究結果で分かっていた。今回はこのクロマチン構造変化に伴い、両遺伝子プロモーター領域の転写因子結合が変化することでWpigenetcsな遺伝子発現が調節されていることを見出した。すなわち、StAR遺伝子プロモーター領域では、LHサージによるヒストン修飾変化によりクロマチン構造が弛緩し、転写因子C/EBPβのDNAヘの結合が増加し、mRNA発現が上昇していた。一方で、Cyp19a1遺伝子プロモーター領域ではLHサージによりクロマチン構造が凝縮し、リン酸化CREBのDNAへの結合が減少し、mRNA発現が低下していた。このようにラット顆粒膜細胞の黄体化に伴い、急速に発現が上昇するStARmRNAと 、低下するCyp19a1 mRNAの発現制御には、ヒストン修飾によるクロマチン構造変化を介したいわゆるepigeneticsな変化が関与していることがわかった。このような短時間での巧妙な制御が、排卵とその後の黄体化に必要なプロゲステロン産生に関与しているという興味深い現象がみられた。
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