研究課題
乳癌の浸潤、転移においては、SDF1/CXCR4/Ga13/Rhoシグナル経路の活性化が重要な役割を果たしていることを、これまでに我々は報告した。本研究では子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌を含む婦人科領域の癌の浸潤、転移におけるCXCR4の役割について解析を行ってきた。転移、浸潤能の高い子宮頸癌細胞株においては、乳癌の場合と異なり、SDF-1/CXCR4/Gai/Racシグナル経路の活性化が細胞浸潤を制御していることが、in vitroの実験で示された。さらに、SDF-1/CXCR4/Gaiシグナル経路はp38の活性化を介して、リンパ管新生を誘導するVEGF-cの発現を制御していることが示された。卵巣癌においては、乳癌の場合と同様にSDF1/CXCR4/Ga13/Rhoシグナル経路が細胞浸潤を制御していると考えられた。卵巣癌細胞の浸潤能はGa13の発現量に依存してることが予備実験の結果から示唆された。癌の増殖、進展の様々な過程にCXCR4を含む様々なGPCRが関与していることや、現在の市場における治療薬の50%以上がGPCRを標的としていることを考慮すると、あるひとつのGPCRにより制御される複数のシグナルのうちの特定の経路のみを選択的に阻害するというコンセプトはシグナル選択的なGPCR阻害剤やGPCRの構造変化を促すアロステリックタンパク質といった新たな治療薬の開発にもつながると期待される。
3: やや遅れている
子宮頸癌、卵巣癌細胞株の浸潤を制御するCXCR4下流のシグナル伝達経路の解析は順調に進行しているが、子宮体癌細胞株を用いた解析が不十分である。免疫不全マウスを用いた、in vivoでの造腫瘍能、転移能の解析に関しては、実験条件の検討に時間がかかったため、予定よりも遅れている。
子宮体癌の浸潤を制御するCXCR4下流のシグナル伝達経路の解析を行った上で、卵巣癌、子宮頸癌細胞株を含めてin vivoにおける浸潤能、転移能の解析を行う。特に転移能の高い細胞株を選択し、CXCR4によるリンパ管誘導因子VEGF-Cの発現制御機構の解析を行う。具体的には、VEGF-Cの発現制御が転写調節によるものか、mRNAの安定化によるものなのかを解析する。
設備物品費実験器具:400,000円、試薬:500,000円、実験動物:700,000円、血清培地:200,000円旅費等外国旅費:150,000円、国内旅費:60,000円
すべて 2013 2012
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J Biol Chem
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Arch Gynecol Obstet
巻: 286 ページ: 643-647