研究課題
若手研究(B)
【目的】miRNAは18から25塩基長の小さなncRNAで、標的となるmRNAの3’UTRにある相補的配列部位に結合し、遺伝子の翻訳抑制または分解をすると考えられている。すでにヒトでは1000種以上のmiRNAが同定されており、発生、分化、増殖、アポトーシスなど様々な生物学的プロセスに関与していることが明らかになっている。近年、let-7が一部の癌で発現が抑制されており、癌抑制的に機能していると示唆された。さらに、miRNAを標的とした治療薬の開発も始まり、let-7の補充による肺癌治療薬の開発が進んでいる。そこで、今回我々は、子宮体癌においてDNAメチル化により発現が抑制されているmiRNAを同定し、抗腫瘍効果を検証し、子宮体癌治療へ向けたRNA医薬としての可能性を検討する。【方法】1,子宮体癌細胞株(HEC-1B、Ishikawa、HHUA、KLE)を用いて、脱メチル化前後で発現が2倍以上上昇するmicroRNAを検索する。また、子宮体癌組織において候補となる癌抑制型microRNAが正常子宮内膜組織に比し、発現抑制されているか検討する。2,子宮体癌細胞株に候補microRNAを導入し、がん細胞に対する効果を検討する。また、候補microRNAを導入した子宮体癌細胞をヌードマウス皮下に移植し、腫瘍形成能の変化を検討する。【結果】1,脱メチル化後に4種の細胞株に共通して発現が上昇したのは、miR-34bだけであった。miR-34bは、子宮体癌組織においても正常子宮内膜組織に比し有意に発現が低下していた(p<0.01)。2,子宮体癌細胞株(HEC-1B)にmiR-34bを導入したところ、コロニー形成能および細胞遊走能が、非導入時に比し有意に低下した(p<0.05)。また、miR-34bを導入したHEC-1Bをヌードマウス皮下に移植したところ、皮下腫瘍の定着率が減少した。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた本年度の研究計画通りに研究を行うことができた。miR-34bの子宮体癌細胞への導入に関しては、予めうまくいかなかった時の対応策を考えていたので、時間をロスすることなく研究を進めることができた。
今後は、miR-34bの子宮体癌に対する抗腫瘍効果を検討する。これまでの研究結果からは、miR-34bには強い殺細胞能は認められない。よって、既存の抗癌剤との併用による抗腫瘍効果の増強を軸に検討を行う。抗癌剤は、子宮体癌治療に用いられるパクリタキセル、シスプラチン、ドキソルビシンを予定している。
未使用額の発生は効率的な物品調達を行ったためであり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。次年度は、薬剤感受性試験等の検査費が多く発生することが予想されるが、効率的な研究費の使用に努める。
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