研究課題/領域番号 |
24791721
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西川 明花 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60445236)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 卵管 |
研究概要 |
本研究では、ヒト卵管における成体幹細胞システムの基礎的解明を進めていくと同時に、多角的な臨床応用を目指して、卵管幹細胞分離法の確立を通じて、幹細胞を標的にした新しい治療法の開発を主たる目的とする。そのために、ヒト卵管上皮からのSP (side population) 細胞の分取とその機能解析を行う予定であったが、子宮全摘手術の際に卵管全体も採取するためには、僅かではあるが術式を変更しなければならず、術者に周知しても現場では徹底されず、それ故に、卵管全体の検体の入手が極めて困難となった。そのため、SP細胞の分離のみならず卵管上皮の分離方法の検討も十分に出来なかった。そこで、本年度は、SP細胞の一般的な扱いへの習熟と将来卵管SP細胞の機能を解析するうえで基盤となるアッセイ系の確立を主に行った。SP細胞の由来は子宮内膜として、子宮内膜からのSP細胞の分離を行い、SP細胞に特異的に発現増強するABCG2の発現レベルをRT-PCRで検討したところ、内膜非SP細胞に比べて内膜SP細胞ではABCG2が強く発現しており、分離方法が正しく行われたことが確認できた。また、内膜間葉系幹細胞の最有力候補であるCD140b+CD146+細胞も内膜SP細胞に多く含まれていた。次に、レンチウイルスを用いたSP細胞への遺伝子導入を検討した。細胞を培養するとSP細胞の比率が低下することもあり、内膜からSPを分離した後に培養せずに直接ウイルス液と混合して3時間遠心することで、効率的に遺伝子導入が可能であることが判明した。このことによりSP細胞を蛍光蛋白や発光蛋白で安定的に標識してその振る舞いを追跡することが可能となった。次年度に向けての基盤となる知見ならびに技術が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、ヒト卵管上皮からのSP細胞分離に至らず、その前段階で留まっている点から「遅れている」とした。なお、平成24年4月~7月にかけて研究室が移転したことも研究が当初の予定通り進まなかった一要因となった。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト卵管のみならずラットやマウスといった齧歯類の卵管からSP細胞を分離・解析することで、種差については十分に留意する必要があるものの、検体が希少のために進展が阻まれていた点が改善され、研究が飛躍的に推進する。特に、SP の分離方法の改良・改善や条件設定については、齧歯類で十分検討してから、希少なヒト卵管検体を用いる戦略とする。また、重度免疫不全マウスを用いた移植実験では、卵管より分離した細胞だけでなく、卵管組織自体を移植することも行い、貴重な検体を条件設定のみに費やすだけでなく、有効に活用することで、研究もスムーズに展開させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒト卵管上皮からのSP細胞分離に至らず、その前段階で留まっていたため、解析に要する実験が十分に出来ず、繰越が発生した。また、平成24年度4月~7月にかけて研究室が移転したことも研究が当初の予定通り進まなかった一要因となった。平成25年度は、上述の通り、ヒトのみならず齧歯類の卵管からSP細胞を分離・解析するので、繰越金を併せてこれに使用する。
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