研究概要 |
本研究では、ヒト子宮内膜幹細胞を効率的に得るための有用なマーカーの探索・開発を目的として、フェノーム解析に基づきその候補としてWnt7aを選出し、Wnt7aとその関連分子を幹細胞特性に関連付けて解析を行う予定であった。しかしながら、本研究の開始前後より、子宮内膜の再生などにおけるWnt7aの役割に関する論文が複数発表され(Fan, et al., Endocrinology, 2012; Santamaria, et al., Endocrinology, 2012)、その先行研究があるなかでの研究継続は困難と判断した。そこで、Wnt7aではなく別の候補分子に着目して、研究計画で提案した解析を行うこととした。既にわれわれは、内膜幹細胞の最有力候補集団である内膜side population(SP)細胞のmRNA発現プロファイルのデータを有しているので、その中でSP細胞に強く発現している表面抗原マーカーCD93を候補分子とした。まず、正常子宮内膜におけるCD93の発現・分布を検討したところ、幹細胞が存在すると考えられている基底層付近に比較的豊富に発現していた。詳細に検討すると、CD93陽性細胞は主に子宮内膜血管の内皮あるいはその近傍に存在していた。この分布は内膜SP細胞とほぼオーバーラップしていると考えられるABCG2陽性細胞の分布と一致していた。そこで、CD93を指標にヒト子宮内膜から前方視的にセルソーターを用いて、ヒト子宮内膜CD93細胞を分取して、コロニー形成能および脂肪や骨への多分化能を検出するアッセイに供した。そのなかで、CD93細胞が非CD93細胞に比べて、コロニー形成能および多分化能が顕著な内膜検体も存在したが、安定した結果は得られず、CD93の内膜幹細胞特性における役割についての結論は得られなかった。
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