研究課題/領域番号 |
24791723
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
小出 馨子 昭和大学, 医学部, 助教 (90384437)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | なし |
研究概要 |
未破水かつ未陣痛発来で昭和大学病院及び連携病院で分娩もしくは妊娠中断目的で帝王切開術施行に至った症例のうち、妊娠経過順調であった妊娠6週5例、10-11週5例、妊娠後期(26-38週)10例と、妊娠高血圧症候群を発症した11例から分娩終了時に絨毛を採取し、各症例のDNAメチル化プロファイルを作成し検討した。初めに正常妊娠における絨毛のDNAメチル化の生理的変化について検討した。妊娠6週と11週との比較でメチル化に有意差を認めたのは15,153 CpG sites、11週と妊娠後期では29,422 CpG sitesであった。6週と11週、11週と妊娠後期の両方の比較で有意に変化を認めたのは このうちの638 CpG siteのみであった。この結果より、胎盤の正常な発生・成熟はDNAメチル化によりコントロールされていること、さらにその責任を担っているCpGは妊娠時期により異なる可能性が示された。 組織の種類に依存してメチル化が変化するゲノム領域は、CpG island上や、プロモーター領域に密に存在するCpG site群で確認されることが多いとされる。そこでプロモーター領域(転写開始点上流700bpから下流200bpと定義)に存在するCpG siteの結果のみを用い、1プロモーター領域上に存在する全てのCpG sitesのメチル化状態を平均したものをそのプロモーターの結果とし比較した。有意差のあったプロモーターは、6週と11週の比較で824、11週と妊娠後期では1,226箇所であった。抽出されたプロモーターの遺伝子の傾向を調べたところ、6週から11週で変化を認める遺伝子は血管新生に関連するものが多く、11週から妊娠後期で変化を認める遺伝子は成長・成熟に関連するものが多いことが確認された。この結果はDNAメチル化により胎盤の正常な発生・成熟は制御されていることを強く示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「正常に妊娠を維持するのに必要な、胎盤DNAメチル化の妊娠中の生理的変化を解明する」という目的は達成された。さらに「PIH発症に関与している可能性のあるDNAメチル化異常の抽出」という次の目的に対しても、すでに妊娠高血圧腎症症例の絨毛のDNAメチル化プロファイルは作成済みであり、現在比較解析中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
1.これまでの研究結果より、絨毛のDNAメチル化が生理的に変化すると推測されるCpG sitesの妊娠時期による特徴を確認することで、これらの変化が胎盤の発生や成熟と強く関連していることを検討する。 2.妊娠後期(正常)と妊娠高血圧腎症(PE)胎盤とのDNAメチル化プロファイルを比較し、PEに特徴的なパターンを確認する。 3.2で抽出されたCpG siteにおける、妊娠6週~後期での生理的変化を確認し、PE病態形成との関連を考察する。 4.2で抽出されたCpG siteのDNAメチル化変化が遺伝子発現変化に影響しているかを確認することで、これらのDNAメチル化異常がPEの病態形成に影響している可能性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
クラスター解析にて、さらなる検討対象として抽出されたCpG sitesに関しては、症例数を増やしパイロシークエンス法でDNAメチル化率を測定することで、アレイの結果の確証を得る必要がある。そのため、平成25年度の研究費はパイロシークエンスを施行するための費用に用いる予定である。
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