研究概要 |
はじめに、24年度に作成した、妊娠6週5例、妊娠10-11週5例、正常妊娠後期10例、PE症例11例の絨毛DNAメチル化プロファイルについて解析した。 正常妊娠後期群とPE群を比較したところ、PE群でメチル化異常を認めたCpG群は1,317 CpG sitesであった。このうち、CpG islandに存在する206 CpG sitesの結果を用い、DNAメチル化プロファイルを作成した全ての症例を対象にクラスター解析を施行したところ、解析に用いた206 CpG sitesにおけるDNAメチル化パターンは、妊娠6週、妊娠10-11週、正常妊娠後期、PEでそれぞれ明らかな異なることが分かった。この結果は、PEでDNAメチル化異常を認めるCpGのなかには、妊娠6週から妊娠10-11週にかけてDNAメチル化率が変化する部分が含まれていることを示すものである。 次に「PE絨毛でDNAメチル化異常を認め、かつ妊娠6週から妊娠10-11週でもDNAメチル化率が有意に変化するCpG sites群」から細胞増殖などとの関連が報告されている遺伝子(AKT3、HOXC4、MAD1L1、NCOR2、NSD1、ZFP36L2)を選出し、遺伝子発現量について検討した。対象は各群につき10症例ずつとした。絨毛組織からmRNAを抽出し、各遺伝子のmRNA量をRT-PCR法で測定し各群間で比較した結果、妊娠初期には低発現で、妊娠の経過に伴い発現が増加する傾向であった。PE群では正常後期群と比較し低発現であり、特にHOXC4やMAD1L1では妊娠6週と同程度に低発現であった。この遺伝子発現の傾向は、アレイで得られたDNAメチル化の結果から予想された遺伝子発現傾向と全て一致していた。この結果より、これらの遺伝子はDNAメチル化により遺伝子発現がコントロールされている可能性が示唆された。
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