研究課題/領域番号 |
24791725
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
彭 為霞 日本医科大学, 医学部, 助教 (00535700)
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キーワード | 子宮内膜癌 / 子宮内膜増殖症 / FGFR2IIIc / 発癌 / 分化度 / Grade |
研究概要 |
子宮類内膜腺癌は子宮内膜増殖症を経て発癌し、Grade分類は予後に関係する。今回、ホルマリン固定、パラフィン包埋された正常子宮内膜10例、子宮内膜異型増殖症10例、及び子宮類内膜腺癌47例の手術症例を用い、子宮類内膜腺癌の発癌過程においてFGFR2IIIcの発現と局在、臨床病理学的因子との関連性について検討した。 正常子宮内膜においては、FGFR2IIIc の軽度発現、内膜異型増殖症や類内膜腺癌においてFGFR2IIIcの過剰発現を認めた (p<0.05)。また、Grade1とGrade2の類内膜腺癌と比べ、Grade3の類内膜腺癌においては、FGFR2IIIc の発現低下が有意に見られた (p<0.05)。さらに、RT-PCR法を用い追加検討した結果、正常子宮内膜と比べ、子宮内膜異型増殖症や高い分化度を示す類内膜腺癌においては、FGFR2IIIc mRNAの発現は著明に増加したことが明らかとしました。しかし、Grade1 の類内膜腺癌と比べ、Grade3の類内膜腺癌においては、FGFR2IIIc mRNAの発現は著明に減少したことを認めた。 このようにFGFR2IIIcの過剰発現は、子宮類内膜腺癌の発癌にだけではく、癌の維持にも深く関与していると考えられる。しかし、FGFR2IIIcの発現は類内膜腺癌の進展に関与しない可能性が高く、一部のGrade3の類内膜腺癌は、Grade1やGrade2の類内膜腺と異なる発癌過程があると考えられる。 上記の結果をまとめた論文をInt J Clin Exp Pathol誌に掲載となった。(Peng WX, Kudo M, Fujii T, Teduka K, Naito Z. Altered expression of fibroblast growth factor receptor 2 isoform IIIc: relevance to endometrioid adenocarcinoma carcinogenesis and histological differentiation. Int J Clin Exp Pathol. 2014 ;7:1069-76.)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子宮内膜癌に対し、FGFR2IIIc 蛋白高発現群と低発現群における年齢、組織学分化度、病期を比較した結果、FGFR2IIIc蛋白の過剰発現は、高い分化度(Grade1, Grade 2)を示す類内膜腺癌に有意に見られた。また、正常子宮内膜組織と比べ、類内膜腺癌前癌病変とされる子宮内膜異型増殖症においても、FGFR2IIIc蛋白の過剰発現も認めた。さらに、RT-PCR法を用い追加検討した結果、正常子宮内膜と比べ、子宮内膜異型増殖症や高い分化度を示す類内膜腺癌においては、FGFR2IIIc mRNAの発現は著明に増加したことが明らかとした。しかし、Grade1 の類内膜腺癌と比べ、Grade3の類内膜腺癌においては、FGFR2IIIc mRNAの発現は著明に減少したことを認めた。 FGFR2IIIcの異常発現は類内膜腺癌の発癌過程の早期に関与し、さらに癌の維持にも深く関与していることを示唆した。一部のGrade3の類内膜腺癌は、Grade1やGrade2の類内膜腺と異なる発癌過程があると考えられる。FGFR2IIIc の酵素抗体法は類内膜腺癌の予後予測、標的治療の有効症例の選別に役に立つ可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後、さらに症例数を増やし、子宮類内膜腺癌において、FGFR2IIIcとFGFR2の発現の関連性について検討する。酵素抗体法やRT-PCR法を用い、FGFR2IIIc及びFGFR2の蛋白発現と臨床病理的因子、特に予後との関連を解明する。 また、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片に対して、プロテオーム解析法を使い、子宮内膜癌の発癌や、Grade1類内膜腺癌とGrade3類内膜腺癌にそれぞれ関連する特異的な異常発現蛋白について、網羅的な検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度では、論文の印刷代は予想より費用が低かったため、今年度の研究費は少し次年度に繰り越した。 次年度の研究費使用に関しては、研究目的を達成するための必要な試薬や部品の購入、講習会の参加、研究成果を社会に発信するための国際・国内学会の参加、国際雑誌投稿するための費用として使用する予定である。
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