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2012 年度 実施状況報告書

ヒト卵巣がん幹細胞における幹細胞制御因子の役割の解析

研究課題

研究課題/領域番号 24791729
研究機関独立行政法人国立がん研究センター

研究代表者

石黒 竜也  独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, がん研究特別研究員 (80625690)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード卵巣がん / がん幹細胞
研究概要

国立がん研究センター中央病院婦人腫瘍科において同意の得られた卵巣がん患者より提供された手術検体(腫瘍組織検体ならびに腹水検体)からがん細胞を抽出し、スフェロイド細胞の培養を行った。これまでに18例中5例の進行漿液性腺がん患者由来のスフェロイド細胞の安定培養に成功した。一方、現在までに他の組織型の検体由来のスフェロイド細胞の培養には至っていない。
これらの卵巣漿液性腺がん由来スフェロイド細胞は免疫不全マウスへの移植投与によって腫瘍を形成し、組織学的形態ならびに特殊免疫染色像(Pax8、CA125、WT-1、HE4、p53)から、形成された腫瘍は由来となる臨床腫瘍組織検体と区別できない組織学的特性を持つ腫瘍であった。またスフェロイド細胞ではNanog、Sox2、ALDH1A1などの幹細胞マーカーを高発現し、一方in vitroにおける血清添加による分化誘導後は分化マーカーCK7の発現上昇が見られた。加えてレンチウイルスベクターによるshRNA導入により幹細胞因子であるSox2ならびにALDH1A1の発現を抑制するとスフェロイドの形成および細胞の増殖が著明に抑制されたことから、これらスフェロイド細胞はがん幹細胞の特性を有する細胞集団であるという事を確認した。
ヒト卵巣がん検体由来のスフェロイド細胞培養の報告数はまだ少なく、今後はこのスフェロイド細胞培養系を用いた卵巣がん幹細胞の細胞生物学的、生化学的解析を行い、卵巣がん幹細胞の詳細な特性の解明をめざす。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度の計画目標であった漿液性卵巣がんのスフェロイド細胞の安定かつ永続的な継代培養は5例の卵巣がん由来の細胞で成功している。これらを用いたがん幹細胞特性①造腫瘍能、②幹細胞マーカー発現、③分化能の確認を、①免疫不全マウスへの細胞移植投与、②western blot法、realtime PCR法によりタンパク、RNAレベルにおける幹細胞因子Nanog・Sox2・ALDH1A1の発現ならびに、③in vitroにおける血清添加による分化誘導による分化マーカーCK7の発現を確認した結果、スフェロイド細胞は由来臨床検体と類似の組織形態を持つ腫瘍を形成し、幹細胞マーカーを発現する細胞集団である事が確認された。またレンチウイルスベクターを用いたshRNA導入によるSox2ならびにALDH1A1の発現抑制後、スフェロイドの形成ならに細胞の増殖が著明に抑制された知見より、これらの細胞集団において幹細胞因子の発現が必要であるという結果が得られた。
一方、卵巣漿液性腺がん以外の組織型由来のスフェロイド細胞培養の成功には至っておらず、計画目標であった異なる組織型間のがん幹細胞の比較検討には至っていない。

今後の研究の推進方策

平成24年度計画の継続ならびに平成25年度計画の追加修正を以下のように図る。
(1)卵巣漿液性腺がん以外の他の組織型由来のスフェロイド細胞の培養確立に引き続き取り組む。類内膜腺がんにおけるWNT pathwayの活性など既存の報告ならびに組織microarray解析よりin vitro培養に必須となる因子の検索を行う。
(2)がん幹細胞はこれまで既存の抗がん剤にたいする抵抗性が多くの研究で示されている。卵巣がんのキードラッグであるタキサン製剤ならびにプラチナ製剤に対する感受性試験をスフェロイド細胞ならびにin vitro分化誘導後の細胞を用い比較検討する。
(3)また近年、がん幹細胞の特性のひとつである分化能は一方向性の変化ではなく、分化細胞から幹細胞への分化可塑性の報告がみられる。卵巣がんにおいてもこの分化可塑性の有無を検証すべく、in vitroにおいて分化誘導後細胞のスフェロイド再形成能の確認、ならびにin vivoにおいて分化誘導後細胞とスフェロイド細胞の腫瘍形成能の差異を確認する。加えて、再形成スフェロイド細胞におけるタキサン製剤ならびにプラチナ製剤への感受性変化も検証することで、卵巣がん治療抵抗性解明への糸口を探ることとする。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

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公開日: 2014-07-24  

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