研究課題/領域番号 |
24791734
|
研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
神谷 千津子 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (10551301)
|
キーワード | 心筋症 / 妊娠・出産 |
研究概要 |
心疾患を持つ女性にとって、循環血液量の増加など、ダイナミックな循環動態変化を来す妊娠・出産は非常にリスクの高いものである。一方で、循環器医療の進歩により、生殖年齢に到達する重篤な先天性心疾患を持つ女性が増加している。未曾有の少子化に直面する我が国では、このような合併妊娠においても、安心安全な妊娠・出産の実現が、極めて重要と考える。そこで、本研究は、心疾患合併妊娠のヒト臨床データおよびモデル動物によって、心機能低下を来すことが知られている切断(異型)プロラクチンを柱とした病態生理を解明し、さらに抗プロラクチン療法(ブロモクリプチン療法)の有効性を解明することを目的としている。 平成25年度には、周産期心筋症合併妊娠45人において切断プロラクチン測定を行い、正常妊産褥婦よりも有意に増加しているという結果を得た(周産期心筋症合併 vs 正常妊産褥婦: 5.58 ±7.64 vs 1.96 ±2.78FU)。また、抗プロラクチン療法は30人で行われ、うち、急性期に8週間以上のプロトコールで行われたのは27人であった。この27人(施行群)と、抗プロラクチン療法を行わなかった15人(非施行群)の心機能予後を比較すると、急性期の回復度は、抗プロラクチン療法施行群が大きかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
切断プロラクチンは、これまでに、血管障害や心筋内代謝異常を引き起こし、妊産褥婦が突然心不全を発症する周産期(産褥)心筋症の一因であると報告されている。しかしながら、切断プロラクチンのroutine定量化はこれまでなされたことがなく、本研究は、切断プロラクチンの測定方法を確立し、心疾患合併妊娠における生理作用を、ヒト臨床研究とモデル動物実験により解明する目的である。 ヒト臨床研究においては、心疾患合併患者に引き続き、周産期心筋症患者における切断プロラクチン作用を解明するため、実際に、周産期心筋症患者45人と、正常妊娠女性9人の検体を集積し、切断プロラクチンをはじめとして、プロラクチン、カテプシンD活性、カテコラミン3分画、レニン、アンジオテンシン、アンジオテンシノーゲン、BNP測定などを行った。結果、周産期心筋症患者で切断プロラクチンが増加していることを明らかにした。 また、モデルマウス基礎実験では、心筋症マウスの研究準備を行っている。研究計画は、おおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
心疾患合併妊娠モデル動物による、切断プロラクチンの動態、心機能変化、抗プロラクチン療法の検証を行う。 ヒト臨床研究結果については、学会や雑誌等で報告を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験消耗品類の購入に際し、研究計画時点での予定していた金額より安価に抑えられたため、残金が生じることとなった。 検体測定に必要な試薬類や外注検査費、モデル動物の購入、学会報告のための参加費・旅費、論文化の際の英文添削費用、研究補助者への謝金などに、使用を計画している。備品などの購入は予定していない。
|