研究課題/領域番号 |
24791735
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
熊井 琢美 旭川医科大学, 医学部, 助教 (00596306)
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キーワード | EGFR / ペプチドワクチン |
研究概要 |
頭頚部癌はErbBファミリーを使い分けた生存戦略を有しており、ErbBファミリー全体を標的とする事は免疫治療において有効と考えら れるため、頭頸部癌の新たな治療法としての免疫治療においてErbBファミリーを癌抗原とした研究を進めている。ErbBファミリーの一 員であるEGFRを用いた癌ワクチン療法の確立のため、EGFRから多くの日本人が持っている複数 のHLA-DRに結合可能なエピトープを同定し、そのペプチドを合成した。次にこのペプチドを用いてEGFRペプチド特異的ヘルパーT細胞 株を樹立し、同T細胞株のペプチド特異性及びHLA-DR拘束性を確認した。同T細胞株は複数樹立できており、様々なHLA-DRに対して反応 可能である事より、このペプチドは複数のHLA-DRに対して、つまり複数のヒトへ応用可能なペプチドと考えられる。 同ヘルパーT細胞株は腫瘍細胞に直接反応しなおかつ腫瘍殺傷能力も備えており、樹状細胞にパルス下した腫瘍lysateにも反応し、頭頸部癌患者血中にも今回同定したEGFRペプチドに 反応性のT細胞群がいる事を確認した。以上より、同ペプチドは抗原特異的なヘルパーT細胞を増幅する頭頸部癌患者に適応可能な癌ワ クチンとなりうると考えられた。 今回同定したエピトープはその他のErbBファミリーであるHER-2やHER-3、そしてEGFR阻害薬に対する抵抗性の原因の一つと考えられて いるc-Metにも高い相同性を有する事を見いだし、EGFR特異的ヘルパーT細胞株はHER-2, HER-3そしてc-MetのanalogousなペプチドおよびHER-2やc-Met陽性腫瘍も 反応していた事から、EGFRペプチドによるワクチン療法はHER-2やHER-3、c-Met陽性腫瘍にも適用可能である。 さらには、今後はEGFR阻害薬と免疫療法の併用に関する系を進めてい く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、研究実績に示した通り、研究計画に沿って順調に計画は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍細胞をsiRNA処理して抗原の発現を減少させ、T細胞の反応が 変化するかどうか検討する。各ErbBファミリーを発現する癌幹細胞株が得られれば、これらを標的細胞としてT 細胞の反応を観察する 。 Tヘルパー細胞株樹立時における制御性T細胞 (T reg)の影響の検討 CpGの一種であるPoly-G10が、最近T r egの抑制機能を解除することが新たな知見として報告されている。有効な癌抗原特異的Tヘルパー細胞応答を惹 起する際、負の反応を 引き起こすT regが同時に誘導されてくることは避けなければならない課題である。本研 究では、初回誘導時に、培養液中にPoly-G10 を添加して、誘導されたT細胞の性質をPoly-G10無添加時、あるい はあらかじめCD25陽性細胞を除去した場合とで、抗原に対するその 反応性ならびにエピトープスプレッディング の差をサイトカイン分泌パターンの変化や、フローサイトメーターで、その細胞表面形 質の性状の変化を比較検 討する。 EGFR陰性かつHER-2やHER-3、c-Met陽性の腫瘍細胞株を探索し、樹立したEGFR特異的T細胞株との共培養系を用いてその反応性及び腫瘍 殺傷能力をサイトカインELISAやチミジンもしくはLDHを用いたサイトトキシックアッセイで検討する。EGFR阻害薬を腫瘍に添加する事 で、腫瘍表面上CD80等の共刺激分子やHLA- Class I等の免疫関連分子の変化を観察する。 さらに、近年示唆されてきた分子標的薬による抗腫瘍免疫増強効果をEGFR阻害薬を用いて、HLA-DRやサイトカインの産生能を併せて評価していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験が順当に進んでおり、本実験系を用いて、EGFR阻害薬等の分子標的薬などを用いた免疫治療のアジュバント効果を示せれば、臨床実地に即した有効な癌免疫療法を確立できる可能性があるため。 フローサイトメーターやウエスタンブロットなどの各種抗体、ペプチド合成、EGFR阻害薬等の試薬、ELISAキット、細胞培養試薬、細胞分離試薬など
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