頭頸部癌の新たな治療法としての免疫治療においてErbBファミリーを癌抗原とした研究を進めている。ErbBファミリーの一員であるEGFRを用いた癌ワクチン療法の確立のため、コンピュータアルゴリズム解析を用いてEGFRから多くの患者に適応可能なエピトープペプチドを同定、合成した。次にEGFRペプチド特異的ヘルパーT細胞株を樹立し、ペプチド特異性及びHLA-DR拘束性を確認した。同T細胞株は様々なHLA-DRに対して反応可能である事より、このペプチドは多くの患者へ応用可能なペプチドと考えられる。 同ヘルパーT細胞株は腫瘍細胞への腫瘍殺傷能力も備えており、Stage IVの頭頸部癌患者血中にも今回同定したEGFRペプチドに反応性のTh1細胞群がいる事を確認した。以上より、同ペプチドは頭頸部癌患者に適応可能な癌ワクチンとなりうると考えられた。今回同定したエピトープはその他のErbBファミリーであるHER-2やHER-3、c-Metにも高い相同性を有する事を見いだし、EGFR特異的ヘルパーT細胞株はこれらのanalogousなペプチドにも反応可能な事から、EGFRペプチドによるワクチン療法はHER-2やHER-3、c-Met陽性腫瘍にも応用可能である。加えて、今回の実験系のうち最も大きな進歩の一つはEGFR阻害薬による抗腫瘍応答の増強効果である。本検討で我々はEGFR阻害薬が腫瘍表面上のHLA-DRの発現を増強させること、さらにEGFR阻害薬で腫瘍を前処置することによって、ヘルパーT細胞の抗腫瘍効果が増強することを明らかとした。以上より、本研究の成果は、癌免疫治療と分子標的薬によるcombination therapyの基盤となりうると考えられた。
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