研究課題
本研究は、頭頸部癌の主要な発がん要因である喫煙について、発がん要因のみならず、化学放射線療法の耐性化機序、浸潤能獲得機序の解明の為、頭頸部癌細胞株に喫煙抽出物を暴露させ、段階的に上記評価を行い、最終的にはこの喫煙癌細胞の実験病理学的研究により、将来の喫煙関連頭頸部癌征圧を目的としているが、本年は以下の如くの研究の成果であった。1、頭頸部扁平上皮癌3種類について、親株、喫煙暴露細胞株(直接投与、間接投与)間の薬剤感受性をMTTassayにて評価した。投与薬剤としては、シスプラチン、5FU、ドセタキセル、パクリタキセル、セツキシマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ジェムシタビンを用いた。その結果、セツキシマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブに対して、1.5ヶ月間喫煙に暴露した細胞株は優位な耐性を獲得した。その他の薬剤については優位変化を確認できなかった。2、喫煙関連であるとされる肺癌細胞株、膀胱癌細胞株を用いた同様の実験系においても、上記のEGFRをターゲットとする分子標的薬の耐性が確認された。また、マトリゲルと用いた浸潤能確認実験系では、喫煙癌の高度浸潤能が確認された。3、現在、この機序を研究すべく、各種シグナル阻害剤、siRNAを用いたパスウェイ解析を行う一方で、RNAを抽出しマイクロアレイによる網羅的mRNA、miRNAの発現解析を行っており、次年度にこれらの機序を詳細に確認していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究の最大の問題点は、喫煙暴露頭頸部癌が、薬剤耐性能、高度浸潤能を獲得するかと言った点であったが、この点は今年度の薬剤耐性実験、浸潤能評価実験でクリアされた。また、マイクロアレイにより網羅的RNA発現評価実験を行うことができた。以上より、本年度の自己評価としてはおおむね順調であったと思われる。
次年度は、喫煙関連頭頸部癌の薬剤耐性能獲得機序の詳細な評価となる。マイクロRNAの発現変化、メチル化などのエピジェネティック変化とそれに伴うmRNA発現変化が短期的な喫煙暴露細胞内で起こりやすい変化であると考え、これらをまず評価していきたい。マイクロアレイによる網羅的な発現プロファイリングは、スクリーニングに非常に有用である一方で、なかなか本質的な分子に到達できないこともある。これらについては、申請者が今まで行ってきた同様の研究を参考に一つずつ進めて行きたい。マイクロアレイの結果により得られた耐性候補遺伝子につき、Real time PCR(各遺伝子、マイクロRNA 特異的primer と蛍光probe を用い、定量的PCR を行い、mRNA 発現量、マイクロRNA 発現量を検討)Immunoblotting(特異的抗ヒト抗体を用い、ECL Detection Reagent とLAS 1000 Plus with a Science Lab 99 Image Gaugeにて可視化し、耐性細胞株、コントロール株の耐性化遺伝子の発現をみる)、耐性関与遺伝子導入による薬剤耐性化実験(発現ベクターをlipofection 法にて遺伝子導入、MTT assay にてCDDP IC50 の算出を行う)、 RNAi を用いたCDDP 獲得耐性解除化の検討(候補遺伝子におけるRNAi は、作成されているsiRNA を購入し、Oligofectamine(Invitrogen)にて細胞内に導入する。導入細胞、コントロール細胞を用い、薬剤耐性能の評価を前後で行う。さらに、これらで有力なRNAを抽出できれば、マウスを用いたin vivo実験、臨床検体を用いた検討へと推進させる
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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