頭頸部癌進展に対する炎症反応を介したCD147/EMMPRINの関与を検討するため、炎症に関与し、かつCD147/EMMPRINの特異的リガンドとして報告されたS100A9とCD147/EMMPRINの相互作用について検討した。この結果、S100A9による刺激により頭頸部癌細胞の増殖能と浸潤能が亢進することが確認されたが、この浸潤能の亢進はCD147/EMMPRIN阻害剤により消失した。この結果から、S100A9とCD147/EMMPRINの相互作用が頭頸部癌進展に寄与し、CD147/EMMPRINが炎症環境下における頭頸部癌進展に関与することが示唆された。 また、頭頸部癌転移に対するCD147/EMMPRINの関与を検討する目的で、早期舌癌の臨床検体を用い、原発腫瘍におけるCD147/EMMPRINと頸部リンパ節転移に関する検討を行った。この結果、原発腫瘍におけるCD147/EMMPRINの発現と頸部リンパ節転移に相関性が示された一方、CD147/EMMPRINの発現と腫瘍細胞の分化型や脈管浸潤、リンパ管浸潤、神経周囲浸潤などとは有意な相関を示さず、CD147/EMMPRINが早期舌癌の頸部リンパ節転移の独立した予測因子となる可能性が示唆された。 さらに、頭頸部癌細胞におけるCD147/EMMPRINを介した細胞内シグナル伝達の解明を目的に、頭頸部癌細胞におけるCD147/EMMPRINをノックダウンし、主要なシグナル伝達因子の変化を検討した。この結果、RAS/MAPKカスケードの関与が示唆された。
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