研究実績の概要 |
高齢者によくみられるメマイ疾患として、一過性脳虚血発作である椎骨脳底動脈循環不全症(Vertebrobasilar Insufficiency; VBI)が挙げられる。VBIでは、前庭動眼反射vestibulo-ocular reflex(VOR)の中心的役割である内側前庭神経核とその周辺領域に一過性の虚血が生じることで回転性メマイを生じる。本研究ではこの点に着目して、内側前庭神経核ニューロンの電気生理学的特性が一過性虚血によりどのように変化するかを検討した。 前年度までの研究より、一過性虚血を受けた内側前庭神経核ニューロンは自発発火を一時的に休止することが明らかとなっていた。別の先行研究から、内側前庭神経核ニューロンはType AニューロンとType Bニューロンに大別されていたが、これはあくまで、定性的な分類であった。 このため、まず、ニューロンのスパイク特性を定量的に評価するため、スパイク形状の一時微分係数(dV/dt)を算出し、時間経過とdV/dtの関係からType A,Type Bニューロンを規定した。 そのうえで、5分間の無酸素無グルコース負荷を与えたときの、1)自発発火停止までの時間、2)発火停止時間、3)虚血終了から自発発火再開までの時間について、ニューロンのタイプ別に調査した。その結果、Type Bニューロンは全体の90%が、一方、Type Aニューロンでは68%のニューロンが虚血に反応して自発発火を停止したが。各パラメーターで比較すると、2)、3)ではニューロンタイプによる差異はみとめられなかったが、1)の自発発火停止までの時間は、Type Bニューロンの方が有意に速い結果となった。このことは、よりPhasicな特性をもつType Bニューロンの方が、tonicな性格のType Aニューロンよりも、素早く虚血に反応し、このことが眼球運動・眼振解発に深く関連していることが示唆された。
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