平成25年度には内リンパ嚢(管)閉塞術後、4週間、自由飲水にて飼育した動物にバゾプレッシンレセプター2型(V2R)拮抗的阻害薬であるOPC-31260及びOPC-41061を5日間連続して経口投与する群と同様の処置を施した動物に上記薬剤を増粘剤とともに正円窓にgel foamに溶かして置いてくる手法による鼓室内投与群の水腫軽減効果について内リンパ嚢(管)閉塞術群と比較検討した。薬剤の投与量は10mg/kg及び100mg/kgの2系統、鼓室内投与群は1mg/bodyとした。形態的な検討部位は前年度に明らかにしたメニエール病モデル動物で水腫形成を有意に認めた蝸牛及び球形嚢とした。結果としては両群ともに手術単独群と比較してV2R拮抗的阻害薬投与による水腫軽減効果を認めたが、投与量を100mg/kgとした群では手術単独群よりも高度な水腫形成を認めた。薬剤の投与による影響を確認するために全身投与による血中抗利尿ホルモン(ADH)及び血漿浸透圧のモニタリングも各条件の動物について合わせて行った。全身投与量10mg/kg及び鼓室内投与群ではコントロール群と比較して血中ADH値、血漿浸透圧の有意な上昇は見られなかった。一方、投与量100mg/kgの群では血中ADH値の上昇、血漿浸透圧の上昇が見られ、内因性のバゾプレッシン(VP)負荷に伴う水腫形成をもたらすものと考えられた。 本研究ではメニエール病の発症には内リンパ嚢の機能不に加えてVP-AQP2システムを介した水代謝機構が相乗的に作用していることがメニエール病モデルを用いて形態学的及び機能的に証明された。メニエール病モデル内耳にVPを介した水代謝機構が介在している可能性が示唆され、V2R拮抗的阻害薬をメニエール病に対する新規の治療薬として応用する上で最も適切な方法について検討することができた。
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