研究課題
現在、多くの体細胞で分化誘導のマスター遺伝子が判明し、ES細胞からの分化誘導が可能となっている。しかし、さらにin vivoの研究が行われ、結果を出している組織はまだ少ない。この理由は動物の体の機能が、特に内分泌・生殖といった分野では単一の細胞のみで支配されるものではなく、複数の細胞の関与によって成り立っているためであると考える。本研究は、ES細胞を甲状腺濾胞上皮細胞へと分化誘導し、体細胞への生着を目的とした基礎実験であった。そのなかで2012年にNatureにES細胞から機能的甲状腺細胞への分化誘導の成功が発表された(Generation of functional thyroid from embryonic stem cells)。この問題点はその効率と手法にあり、一般的に行える実験内容ではない。我々は本研究を、分化誘導した体細胞をin vivoの研究、ひいては臨床応用へと進める一つの手がかりとすることを到達目標においており、その分化誘導の普遍性が重要であると考えた。そこで、もう一度ES細胞の未分化能維持と分化誘導の仕組みまで掘り下げて、内胚葉系細胞である甲状腺への分化効率と簡便さを高める工夫を研究した。胚性癌細胞およびES細胞を使用して実験を重ねた。この結果ES細胞の未分化能維持のためにiPS細胞作製に必要な因子として知られるSOX2や、未分化因子と知られるGABPが関与していることを新たに発見し、2014年にBiochim Biophys Actaに発表した。さらにこの研究を進めiPS細胞での実験も行う予定で新たに研究費申請を行った。
すべて 2014
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Biochim Biophys Acta.
巻: 1839 ページ: 406-420
10.1016/j.bbagrm.2014.03.016. Epub 2014 Apr 3.