研究課題
最終年度の研究は、主に頭頸部扁平上皮がん細胞株を用いたESRP1およびESRP2の機能解析を行った。SAS細胞、HSC4細胞、Ca9-22細胞においてsiRNAを用いてESRP1およびESRP2をそれぞれ遺伝工学的手法で発現抑制を試みた。mRNAおよびタンパク発現が抑制された事を確認して、実験に用いた。3種類のがん細胞において増殖能に変化は見られなかったが、有意に運動能が増加する事を確認した。さらにphalloidin染色を行うとESRP1ノックダウン細胞ではlong filopodiaの形成が見られたがESRP2ノックダウンでは見られなかった。この変化のメカニズムを明らかにするためRac1 mRNAのisoformを調べたところ、ESRP1ノックダウンによってRNAスプライシングが変化し、exon3bが挿入され、恒常活性変異体Rac1b isoformが発現上昇している事が分かった。ESRP1結合コンセンサスモチーフであるUGGUGGモチーフの存在も確認できた。続いて増加しているRac1bが活性化されているかどうかをPAK-GST assayで確認したところ、活性型Rac1bが上昇していた。続いてESRP1ノックダウンによる運動能上昇がRac1b発現によるものかを確認するため、Rac1bを選択的にノックダウンした。するとlong filopodiaの形成がなくなり、運動能もキャンセルされた。続いてESRP2ノックダウンによる運動能上昇のメカニズムを解明するため、ESRP2発現抑制した3種類のがん細胞でEMT関連転写因子の発現を調べたところ、dEF1およびSIP1発現が上昇していた。これらの因子をダブルノックダウンしたところ、上昇した運動能はキャンセルされた。以上からESRP1およびESRP2は異なる機序でがん細胞の運動能を制御している事を明らかにできた。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
The journal of biological chemistry
巻: 289(40) ページ: 27386-99
10.1074/jbc.M114.589432