甲状腺癌におけるガレクチン-3の強発現の意義を解明するために甲状腺でガレクチン-3を過剰発現するトランスジェニックマウスを開発した。ヒトのガレクチンー3には機能が異なる一塩基多型があることが知られており2種類のトランスジェニックマウスを作成してそれぞれの発現形を比較することにしていた。しかし、トランスジーンの構築及び目的タンパクの発現確認に時間を要してしまい、2種類のトランスジーンが完成したのは平成25年度であった。その時点で、当初の予定通りの2種類のトランスジェニックマウスを作成し、維持するためには予算が足らない可能性が高いと判断し、wild typeの1種類のみのトランスジェニックマウスだけを作成する方針に切り替えた。また、発現力を重視するために全身の組織で安定した発現が得られることが判明しているpCAGGSベクターをバックボーンとして選択し、ガレクチンー3にHisタグを組み込んだトランスジーンを作成し、トランスジェニックマウスの作成を行った。この系では、想定通りにトランスジーンが組み込まれたトランスジェニックマウスが得られ、マウスが3ヵ月齢になった時点で甲状腺を取り出し顕微鏡下で観察したが明らかな形態学的異常や甲状腺癌の発癌は認められなかった。観察期間が短いため結論付けられないが、甲状腺癌におけるガレクチン-3の強発現は発癌因子ではなく、発癌した結果、何らかの要因で発現誘導されることが示唆された。
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