嗅上皮は、機能の異なる嗅細胞と支持細胞が層構造を形成し、頂端面側からみると嗅細胞と支持細胞が特徴的な細胞配列を形成している。しかしこれらの層構造と細胞配列がどのように形成され、機能と結びついているかは十分に解明されていない。また接着分子は細胞間の接着を介して細胞の運動や形態変化に深く関与することが知られており、申請者のこれまでの研究でマウス嗅上皮の発生・再生過程において、嗅細胞と支持細胞が異なる接着分子を特徴的なパターンで発現し、これらの細胞が分化後に再配列することが分かってきた。そこで申請者らは、接着分子が嗅上皮の発生・再生過程で果たす役割を検証し、嗅上皮の形態形成の機構を明らかにすることを目的として研究をすすめた。接着分子の中でも、ネクチンは細胞内で結合するアファディンを介して、カドヘリンと相互作用しながら細胞間接着の形成を促進することが、培養細胞の実験で示されている。そこで、ネクチンをノックアウトしたマウス嗅上皮頂端面側の細胞配列を観察したところ、嗅細胞と支持細胞の配列が乱れていた。この結果から、ネクチンが嗅上皮の細胞配列形成に寄与することが分かる。そこで、ネクチンが嗅上皮の細胞配列に寄与するメカニズムを明らかにするために、次のような細胞混合培養実験を行った。嗅細胞と支持細胞のそれぞれに発現しているネクチンを培養細胞に強制発現させ、これらの細胞を培養皿上で培養した。その結果、これら2種類の細胞は、培養皿上において特徴的な細胞配列を形成した。以上の結果からネクチンの相互作用が嗅上皮の細胞配列に寄与している可能性が示された。
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