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2012 年度 実施状況報告書

中耳粘膜上皮細胞の培養とその臨床再生学への応用

研究課題

研究課題/領域番号 24791787
研究機関長崎大学

研究代表者

穐山 直太郎  長崎大学, 大学病院, 助教 (90554238)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード中耳 / 中耳粘膜上皮 / 再生 / 培養細胞
研究概要

中耳手術では、削開乳突空などにおいて粘膜の温存が困難であることが多く、術後形性鼓膜の再陥凹、癒着および再形成性真珠腫などが問題となる。削開乳突腔の含気を維持し、ガス産生能などの生理機能を回復するために様々な工夫がなされているが、未解決の部分も多い。自家細胞による中耳粘膜組織の組織再生が確立されれば、中耳手術後の問題点を抜本的に解決することが期待できる。これまでに中耳粘膜上皮細胞や鼻粘膜上皮細胞由来細胞シートを動物モデルに移植した報告があるが、我々は、細胞、足場、調節因子を同時に移植し、生体内で組織再生を図るin situ tissue engineeringの可能性に注目した。合成マトリックスであるハイドロゲル(PuraMatrix, BD Bioscience, California, USA)は組織再生の生体内研究への応用が報告されている。中耳粘膜再生の足場としてハイドロゲルを用い、ラット中耳粘膜上皮培養細胞と配合して移植実験を行った。ドナー細胞にSD-TGラット(グリーンラット)を用い、EGFPを移植後解析のトレーサーとした。初代培養はexplant culture法で行い、培地はDMEM:BEGM=1:1用いた。レシピエントにSDラットを用い、中耳骨胞の粘膜を可及的に除去し、中耳粘膜障害モデルとした。ハイドロゲルにSD-TGラット由来の中耳粘膜培養細胞を加え、FK506による免疫抑制下に移植を行った。培養細胞は免疫組織学的に上皮系の細胞であることが確認でき、EGFPをトレーサーとしたレシピエントの解析では移植後7日目、14日目、28日目すべてにおいてEGFPを発現する細胞が移植部位に確認され、免疫組織学的な解析により、同細胞が上皮細胞の特徴を有していることが確認され、本実験モデルにおいて中耳粘膜培養細胞の中耳粘膜障害部位への生着を示唆する結果が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ドナー細胞にSD-TGラット(グリーンラット)(♂, 4週齢, 90~100 g)、レシピエントにSDラット(♂, 6週齢, 150~160 g)を用いた。初代培養はexplant culture法で行い、培地はDMEM:BEGM=1:1の混成とし、添加因子としてハイドロコーチゾン(0.5 μg/ml)、インスリン(5.0 μg/ml)、トランスフェリン(10 μg/ml)、トリヨードチロニン(6.5 ng/ml )、hEGF(0.5 ng/ml)、レチノイン酸(0.1 ng/ml)、エピネフリン(0.5 μg/ml)、ゲンタマイシン/アンフォテリシンB(50 μg/ml)、BPE(50 μg/ml)を加えた。I型コラーゲンでコーティングされた培養皿を用い、環境設定は37 ℃, 5% CO2 とし、1日おきに培地を交換し、第3代まで継代した細胞を移植に用いた。培養細胞は免疫組織学的に解析し、上皮系のマーカーとして抗サイトケラチン抗体、間葉系のマーカーとして抗ビメンチン抗体を用いた。レシピエントの中耳骨胞の粘膜を可及的に除去した中耳粘膜障害モデルを作製し、ハイドロゲルに培養細胞と培地を加え、同モデルに移植した。移植後の免疫抑制はFK506(0.32 mg/kg)(Astellas Pharma Inc., Tokyo, Japan)を使用し、術後7日目、14日目、28日目で移植後の解析を行った。ドナーであるグリーンラット由来の蛍光(enhanced green fluorescence protein (EGFP))をトレーサーとし、再生中耳粘膜組織の構成細胞の起源を明らかにした。結果、すべての時期においてドナー細胞陽性部位を認め、同部位の連続切片における免疫組織学的解析ではサイトケラチン陽性、ビメンチン陰性で移植し、生着が示唆せれた細胞は上皮系の細胞であることが確認された。

今後の研究の推進方策

中耳粘膜再生の足場としてハイドロゲルを用い、ラット中耳粘膜上皮培養細胞と配合して移植する中耳粘膜障害モデルにおける中耳粘膜組織再生実験において、EGFPをトレーサーとした移植細胞の生着を示唆する結果が得られた。EGFP陽性細胞は免疫組織学的解析で抗サイトケラチン抗体陽性かつ抗ビメンチン抗体陰性で、上皮細胞であることが示唆された。
今後は、本実験系における組織再生の可能性について詳細な評価を行い、細胞の移植至適濃度の検討を行うことを今後の推進方策とする。細胞移植群をハイドロゲルなし、ハイドロゲル+細胞(低濃度)、ハイドロゲル+細胞(高濃度)の3群について移植実験を行い、移植生着効率の評価を、EGFPをトレーサーとして評価する。また、EGFP陽性部位については前述の抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体を用いた免疫組織学的解析に加え、移植細胞の生着、組織再生を明確に確認するために、以下の解析を追加する。①免疫組織学的な手法を用い、細胞間接着の評価として抗Eカドヘリン抗体を用い、基底膜の形成の確認に抗4型コラーゲン抗体を用いる。②組織リモデリングの評価として抗3型コラーゲン抗体を用いた免疫組織学的解析も行う。③中耳粘膜の上皮細胞としての機能解析として粘液産生の有無を評価するためにPAS染色を行う。④電子顕微鏡を用い、走査型顕微鏡による再生組織の形態学的解析および透過型顕微鏡による細胞間接着、上皮間接着でもっとも重要といわれるアドヘランスジャンクションの証明を行う。最終的には本組織再生モデルが聴力についても正常であることを証明するためにラットにおける聴力評価、聴性脳幹反応(ABR)のセットアップを行い、正常コントロールとの比較評価を行う。
以上の評価項目をもって本実験系におけるin situ tissue engineeringの有効性を証明し、将来的な臨床応用にまで結び付けたい。

次年度の研究費の使用計画

1回の移植実験系でドナーとしてのSD-TGラット(日本エスエルシー)が6匹、レシピエントとしてハイドロゲルなし、ハイドロゲル+細胞(低濃度)、ハイドロゲル+細胞(高濃度)の3群(n=3、一側をコントロールとする。)として、SDラット9匹(18耳)が最低限必要であり、移植後1、2、4週で評価するため27匹を要し、7,927×6+1,974×27=100,860(円)となる。想定される術中死やテクニカルエラーも加味し、1回の移植実験系の実験用動物費を約120,000(円)で算定し、年間3回の移植実験を行うとして動物用実験費としてそれぞれ360,000(円)と算定した。移植に用いるペプチドハイドロゲル(PuraMatrix, BD bioscience)は1耳の注入用移植サンプル200μlに100μl必要であり、1回の移植で最低5.4mlを要する。年間35,000(円)/5mlを3本使用することが予測され、抗体などの試薬、培地など実験用薬品として年間500,000 (円)で算定した。ABRのセットアップについては、本体は奨学寄付金で負担し、キャリブレーションシステム1,272,000(円)を当研究費から負担する。果発表費は国内50,000(円)、海外300,000(円)、論文投稿料、消耗品、雑費などをあわせて200,000(円)とし、合計360,000+600,000+1,272,000+50,000+300,000+ =2,682,000(円)で計上した。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Evaluation of in situ tissue engineering for mucosal regeneration of rat middle ear.2012

    • 著者名/発表者名
      穐山 直太郎
    • 学会等名
      第14回国際組織細胞科学学会(ICHC)
    • 発表場所
      Kyoto
    • 年月日
      20120826-20120829
  • [学会発表] Ultrastructure of regenerated middle ear mucosa after transplantation of cultured epithelial cells.2012

    • 著者名/発表者名
      穐山 直太郎
    • 学会等名
      The 9th International Conference on Cholesteatoma and Ear surgery
    • 発表場所
      Nagasaki
    • 年月日
      20120603-20120607

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公開日: 2014-07-24  

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