反回神経傷害後、部分的神経支配が存在する甲状披裂筋に対し神経筋弁移植術を行う場合、残存する反回神経と移植した頸神経が各々拮抗し新たな神経再支配の確立が妨げられる可能性がある。反回神経脱神経後部分的再生を認める甲状披裂筋モデル動物を作成し、このモデル動物を用い甲状披裂筋に神経筋弁移植術を行うことで、反回神経と頸神経ワナの二重神経支配がおこるかどうかを検討することを目的とした。ラットの左反回神経切断後、切断端間を1㎜離した状態でシリコンチューブ内に挿入し、神経再生を促すことで脱神経後部分的神経再生を認めるモデル動物を24匹作成した。このうち12匹には本処置単独、残りの12匹は本処置後5週後に神経筋弁移植術を行いさらに15週後にまず声帯の可動性を確認したうえで喉頭を摘出し、甲状披裂筋の誘発筋電図、甲状披裂筋と神経終末の組織学的な変化を経時的定量的に検討し、反回神経と頸神経ワナによる甲状披裂筋の二重支配の有無を検討した。結果は筋断面積、神経終末数、アセチルコリン受容体数、神経終末数/アセチルコリン受容体数の比率はいずれも神経筋弁移植術を行った群で有意に増大した。電気生理学的にも頸神経わなを刺激することで麻痺側甲状披裂筋誘発筋電図の振幅の有意な延長を認めた。以上により反回神経脱神経後部分的再生を認める甲状披裂筋に対しても神経筋弁移植術は有効であることが確認された。
|