研究概要 |
シスプラチンは頭頸部癌化学療法のkey drugである.抗癌剤耐性獲得が治療の妨げとなることがあるがその耐性機序は解明されていない。われわれはシスプラチン耐性機序に関わる新たな標的分子を解明するためにシスプラチン耐性株を異なる数種の頭頸部癌細胞株で樹立した。またシスプラチン耐性化に関与する可能性のある分子のひとつとしてLamin A/Cに注目した。本研究では,頭頸部癌においてLamin A/Cがシスプラチン耐性機序に関与するか,また将来的に新たな治療標的分子となりうるか検討を試みた。 まずIMC-3(ヒト上顎洞扁平上皮癌),T3M-1(ヒト口腔扁平上皮癌),SAS(ヒト舌扁平上皮癌)のシスプラチン耐性株と野生株を用い,数種の抗癌剤を用いてMTT assayで薬剤感受性を検討した。いずれの細胞もシスプラチン耐性を獲得しており,耐性株ではLamin A/CはmRNAレベルおよびタンパクレベルで強発現していた。またこれらの細胞株では同様に白金製剤であるカルボプラチンにも耐性を示したが,異なる作用機序をもつ5-FU,ドセタキセル,メトトレキセート,ペプレオマイシンへの感受性は耐性株と野生型とで差はみられなかった。さらに,これらの細胞株にLamin A/C発現ベクターあるいはLamin A/C siRNAを導入し,Lamin A/Cを強発現あるいは発現抑制させると,発現ベクター導入群ではいずれもシスプラチンおよびカルボプラチンの耐性増強が,siRNA導入群ではシスプラチンおよびカルボプラチンの感受性増強がみられた。この結果よりLamin A/C発現量とシスプラチンおよびその他の白金製剤の感受性とに相関があることが示唆された。現在,細胞周期解析をフローサイトメトリーで行っている。
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