研究概要 |
前年度の研究に引き続き頭頸部癌における抗癌剤耐性獲得機序についての検討を行った。樹立したIMC-3(ヒト上顎洞扁平上皮癌),T3M-1(ヒト口腔扁平上皮癌),SAS(ヒト舌扁平上皮癌)のシスプラチン耐性株と野生株を用い検討した。まずシスプラチン添加後48時間の細胞をPI、Annexin Vで蛍光染色し、フローサイトメトリーで解析を行ったところ、耐性株ではPE、Annexin V陽性細胞は野生株と比較して減少していたが、lamin A/C siRNA導入後は有意にPE、Annexin V陽性細胞が増加していた。この結果、lamin A/Cの発現はシスプラチンにより誘導される頭頸部癌のアポトーシスに関連することが明らかとなった。また、同様にlamin A/C発現ベクター導入後の細胞形態の変化を共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、核の形態の変化は明らかではなかったが、lamin A/C強制発現株ではactinの発現が増強し細胞膜からのfilopodiaやlamellipodiaの形成が増加する傾向があった。この結果よりlamin A/Cはplatinum製剤の感受性のみならず、頭頸部癌の浸潤・転移にも関連する可能性が示唆された。以上のことよりlamin A/Cは頭頸部癌における治療のターゲットとして多方向から有用である可能性が考えられた。
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