研究課題/領域番号 |
24791792
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
又吉 宣 琉球大学, 医学部附属病院, 医員 (60448587)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リゾフォスファチジン酸 / 頭頸部癌 / LPA4 / Gタンパク共役型受容体 |
研究概要 |
リゾフォスファチジン酸(LPA)はG蛋白共役型受容体を介して多彩な細胞機能を調節し、癌細胞においては増殖、遊走、抗アポトーシス作用といった悪性形質の発現に関与する。これらの働きはEDG型受容体(LPA1-3)を介する作用とされており、非EDG型受容体(LPA4-6)の果たす作用は明らかではない。本研究では頭頸部扁平上皮癌細胞株を用い、悪性形質発現におけるLPA4シグナリングの役割をin vitro培養系で検討した。 いくつかの頭頸部扁平上皮癌細胞株においてLPAレセプターの発現様式には差異が認められた。また放射線治療抵抗性の頭頸部癌細胞株であるSQ20B細胞ではLPA刺激に対し増殖亢進作用を認め、これはEGD型受容体を介した作用であることが分かった。またSQ20B細胞は内因性LPA4の低発現株であり、テトラサイクリン誘導系アデノウイルスベクター(AdLPA4G)を用いGFP標識LPA4遺伝子の一過性過剰発現を行うと、その増殖亢進作用は抑制された。遊走能に関してもLPA4を過剰発現させることによって遊走が抑制されることが明らかになった。 SQ-20B細胞株における外来性LPA4遺伝子の導入は、LPAによる増殖、遊走刺激を抑制し、非Edg型受容体であるLPA4下流のシグナリングが、Edg型受容体の活性化を介したこれら悪性形質の発現に拮抗しうる可能性が示唆された。今回の研究結果は、LPA4を介するシグナリングにより腫瘍細胞の悪性形質を制御できる可能性を初めて指摘したものであり、悪性腫瘍の病因病態の解明と治療法の開発に有益であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初初年度に予定していた病理組織標本を用いたオートタキシン(ATX)、LPAレセプター発現様式と臨床病理学的事項との相関に関する検討より先にin vitroでの細胞生物学的研究を行った。頭頚部癌細胞の悪性形質発現において、非EDG型受容体であるLPA4を介したシグナリングがEDG型受容体LPA1を介するシグナリングに拮抗するという当初の仮説に沿った結果がSQ20B細胞における増殖能、遊走能の変化より得られた。またテトラサイクリン誘導系アデノウイルスベクター(AdLPA4G)を用いたGFP標識LPA4遺伝子の一過性過剰発現系の作成法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
今後病理組織標本を用いたオートタキシン(ATX)、LPAレセプター発現様式と臨床病理学的事項との相関分析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては所属施設における咽頭癌、喉頭癌症例の病理組織標本を用いたATX、LPAレセプター発現様式と臨床病理学的事項との相関分析を行う予定である。腫瘍径、病期、分化度、浸潤様式、脈管侵襲の有無、血管密度やVEGF発現量、増殖態度(Mib-1 index)等の病理所見、患者背景や術前術後の状態に関する臨床データとスポットカウント法により半定量化したATX、LPA1,4発現レベルとの相関を統計学的に解析する。長期観察可能であった症例については予後は再発の有無、治療応答性について経過中得られた複数の検体で検討予定である。病理組織標本作成に関する消耗品や免疫組織染色に用いる一次抗体等の費用を予算に計上している。
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