頭頸部扁平上皮癌細胞株に対し、LPA刺激下で増殖能の変化をWST-1アッセイにて解析したところ喉頭扁平上皮癌細胞株であるSQ20Bで最もLPAに対する増殖応答が見られた。また細胞膜上に7回膜貫通型受容体(GPCR)の形で存在するLPA受容体(LPA1-6)のサブタイプ毎の発現量をreal-time PCRにて解析したところ、SQ20Bにおいて最もLPA4の発現が低いという結果が得られた。 これを踏まえ、SQ20Bにテトラサイクリン誘導系アデノウイルスベクター(AdLPA4G)を用いGFP標識LPA4遺伝子の一過性過剰発現を行ったところ、リゾフォスファチジン酸(LPA)刺激下の増殖能、遊走能はともに抑制される結果が得られた。これに続きLPAが細胞周期に与える影響についてフローサイトメトリーを用いたセルサイクルアッセイを行った。SQ20B細胞株では刺激2時間後をピークに、分裂期であるG2/M期の割合が増加したが、GFP標識LPA4遺伝子の一過性過剰発現を行ったSQ20B細胞株ではG2/M期の増加が抑制された。 SQ20B細胞株における外来性LPA4遺伝子の導入はLPAによる増殖作用を抑制することが細胞周期に関する解析からも明らかになった。この研究結果より、LPA4を介するシグナリングが腫瘍細胞の悪性形質抑制に向けた病態解析と治療法開発へのターゲットとなりうると考える。
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