研究課題/領域番号 |
24791794
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
黒瀬 誠 札幌医科大学, 医学部, 講師 (60404696)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 特異的免疫反応 / 樹状細胞 / M細胞 / テロメラーゼ遺伝子導入培養ヒト粘膜上皮細胞 |
研究概要 |
舌下免疫療法の免疫機序と効果的な免疫反応に重要な役割を持つ口腔粘膜上皮-樹状細胞,M細胞相互作用について検討することを目的とする。生体防御の最前線である口腔・咽頭粘膜では,免疫応答誘導あるいは免疫寛容のための抗原の認識・提示が行われ、この機構には上皮細胞と樹状細胞の相互作用と連携が不可欠である。特に,樹状細胞の活性化や上皮内への突起の伸長,M細胞機能,粘膜上皮細胞のバリア機構の変化は抗原認識に重要な点であろう。今回の研究の特徴は、申請者が開発したテロメラーゼ遺伝子導入培養ヒト粘膜上皮細胞を用い,単に免疫療法の機序解明だけでなく,抗原認識機構の調節により獲得免疫の賦活化に結びつけるという将来性のある研究を目指している。 in vivo解析<ヒト口腔粘膜・口蓋扁桃・咽頭扁桃上皮のバリア機能の解析> 正常口腔粘膜・扁桃上皮に発現しているタイト結合関連蛋白(claudin-1~ -14,occludin, ZO-1, JAM-1)および細胞接着蛋白(E-cadherin)を免疫染色,Western blot,RT-PCRなどの手法を用いて,蛋白およびmRNAレベルで発現を検索した.特に,2重染色および共焦点レーザー顕微鏡を用いて,上皮での局在を詳細に観察した.さらに蛍光色素の染み込み実験により,口腔粘膜のバリア機能を検索した.同様に新規タイト結合(tricellulin)についても検討を加えた。 <口腔粘膜・扁桃上皮に分布する樹状細胞の性状の解析> 樹状細胞と上皮のバリア機能との関係を検索するために,抗原提示細胞の様々なマーカーとタイト結合関連蛋白の2重染色により共焦点レーザー顕微鏡を用いて詳細に観察した.さらに,粘膜下の樹状細胞との性状の違いを組織学的に検討した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitro解析 <口腔粘膜上皮細胞系のバリア機能調節機構の解析> テロメラーゼ活性化により初代培養ヒト口腔粘膜上皮細胞を不死化させ正常ヒト口腔粘膜上皮細胞株を樹立がなされていないため、引き続き模索していく。また、この系を用いて、種々の刺激条件での細胞接着因子とバリア機能の関連性を解析する。この培養系には抗原提示細胞が一部含まれるため,形態的な物質の取り込みがどのように起こるかを検討し,今後の方法論に生かす。非特異的蛍光物質や分子量別の取り込みなどを検討し免疫療法の補助手段としての有用性を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
M細胞をターゲットとした舌下免疫療法の基礎検討 培養ヒト口腔粘膜上皮細胞系,扁桃上皮細胞を用いて,Ck20陽性M細胞における蛍光色素ラベルされたoligo-DNAおよびsiRNAの細胞内への取り込みを検索する.両者の違いを確認して舌下免疫のM細胞の役割の違いを検討し,効率よい抗原の移入経路を確認する。 本研究を遂行する上での具体的な工夫,研究が計画通り進行しない場合の対応 口腔組織は本学の手術症例を用いる。ヒト咽頭上皮の検討はすでに継続的に行われている病理学講座との共同研究で指導を仰ぎ,小幡和文(研究協力者)が中心となり解析を行う予定である。口腔組織の正常組織の入手には制限があり,基礎研究では新たな培養手法が要求されるため,期間内に研究が進まない場合は,鼻粘膜上皮,口蓋扁桃上皮,アデノイド上皮を代替えとしてすでに手法が確立している実験系を用いることとする。共培養システムの手法は小島隆(研究協力者)の指導を仰ぐ。新たなマウスでのM細胞マーカーが清野ら(東大医科学研究所)により提唱されているため,ヒトとの違いなどの情報を提供してもらうことも考慮する。
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次年度の研究費の使用計画 |
テロメラーゼ活性化により初代培養ヒト口腔粘膜上皮細胞を不死化させ正常ヒト口腔粘膜上皮細胞株を樹立がなされていないため、前年度繰越金(429,198円)を使用し、引き続き模索していく。培養ヒト口腔粘膜上皮細胞系,扁桃上皮細胞を用いて,Ck20陽性M細胞における蛍光色素ラベルされたoligo-DNAおよびsiRNAの細胞内への取り込みを検索する.
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