研究課題/領域番号 |
24791795
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
近藤 敦 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40457718)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 咽頭癌 / 細胞極性 / タイト結合 / 接着分子 |
研究概要 |
がんの浸潤・転移が起きるために必要な微小環境を構築するにあたりEMT(epithelial-mesenchymal transition) が強く関与しているが、EMTを引き起こす因子として注目されているHippoシグナル経路を制御するためには、その上流の細胞極性調節因子を制御することが重要である。細胞極性には細胞接着装置のうちタイト結合が関与していることが知られている.タイト結合の機能異常が癌の浸潤転移に関与していることが報告されており,このことに関しての研究を進めている. 今回,この細胞極性調節因子であるタイト結合分子のうち,JAM-Aに着目して咽頭がんにおける発現の検討を行った。JAM-Aは近年食道癌や乳がんで高発現していることが知られているが、咽頭癌を含む頭頸部癌ではにおける発現はわかっていない。 今回6例の頭頸部扁平上皮癌患者の手術材料を用いてJAM-Aの発現パターンについて凍結材料を用いたPCR、蛍光免疫染色及びパラフィン切片を用いた免疫染色により検討した。RT-PCR・real time PCRの結果、JAM-A のmRNAの発現は、5例において対照である正常扁桃に比較し著しい発現亢進が認められた。蛍光免疫染色ではすべての癌細胞の細胞膜に陽性像が認められた。パラフィン切片を用いた免疫染色では全例の癌細胞に強陽性像がみられた。さらにEMT関連転写因子であるZEB-1の発現についても検討したが、同様に発現が認められた。このようにタイト結合分子の発言変化が咽頭がんでも認められたため,この発現の変化が臨床的にどのように関与しているかを症例を増やして検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究では咽頭癌の浸潤・転移および予後と関連する可能性があると考えられる細胞極性制御、Hippo経路、EMT関連因子の視点からの研究を目的としている.局所の微小環境の変化をとらえるためには,実際の咽頭がん症例における局所の変化について検討する必要がある.そのため,局所における細胞極性を制御する因子について組織学的な変化がないかを知ることが大前提である.これらの細胞極性を制御する因子のうち,今回はHippo経路の上流にある細胞極性調節因子であるJAM-A及び、EMT関連因子であるZEB-1に着目した.組織学的変化をとらえるだけでなく,分子生物学的手法についても準備を進めており,さらに実際の手術検体を用いての実験が進んでおり、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
咽頭癌患者の手術材料を用いてのJAM-Aの発現パターン及びEMT関連転写因子であるZEB-1の発現について更に症例を増やして検討する。またリンパ節転移を有する症例においては原発腫瘍だけでなく転移リンパ節に関しても同様の発現パターンについて検討する。更にはこれらの発現パターンを解析することで細胞極性因子とEMT関連因子の相互関係についても検討し、最終的には効率的に細胞増殖、転移・浸潤を抑制する因子の同定を目指す。 さらに,分子生物学的な手法を用いて定量的な発言の変化をとらえることにより,さらに,症例との予後や放射線感受性について,また,近年注目されているHPVとの関連などについても並行して検討を進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
測定機器などの備品はすでにそろっているため,主に消耗品で抗体やRT-PCRの試薬、測定キットなどに充てる予定である. 今年度は消耗品等の支出に関してはおおむね予定通りの支出が行われた.本年度に参加を予定していた国際学会での成果発表について,次年度に成果発表を行う予定としたため,国際学会旅費,および参加費等に充填させるため翌年度の研究費と合わせて使用することを計画しているため.
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