本研究ではbipotential scaffold(vitrigel薄膜をコラーゲンスポンジに付加したもの)にbasic fibroblast growth factor(b-FGF)を含有した新たな人工材料を作成し気管再建における上皮化促進、機能面の改善を確認することを目的としている。本年度の研究計画では①3種類のスポンジ(b-FGF:0ng含有を(A)、10ng含有を(B)、100ng含有を(C)とする)を作成しラットに移植、②7日、14日、28日の観察期間を経て標本を摘出、③上皮再建を評価、を予定した。 計46匹のラットに移植を行い、摘出標本のうち気管欠損部を中央とする標本を作製した。HE染色での評価を行い上皮形成(単層、重層)、線毛の有無、細胞侵入の程度、血管新生の有無を観察した。 移植後7日目では(A)において単層の上皮形成を認め、(B)(C)では上皮形成に加え上皮下層への細胞侵入を多く認めた。移植後14日では(A)において重層の上皮形成を認め、(B)(C)では線毛形成が観察できるようになり上皮下層での血管様構造を認めるようになった。(B)に比し(C)において形成が促進している傾向にあった。移植後28日目では(A)でもわずかな線毛形成が確認された。今回の研究ではb-FGFによる上皮形成の促進が示唆され、含有量を変化させることで上皮形成に変化が生じることが確認された。
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