研究課題/領域番号 |
24791797
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
佐野 大佑 横浜市立大学, 医学部, 助教 (10620990)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 頭頸部癌 / 頸部リンパ節転移 / 同所性頭頸部癌モデル |
研究概要 |
本研究の目的は、頭頸部癌治療における最大の問題点の一つであり、依然解明されていない頭頸部癌の頸部リンパ節転移のメカニズムを解明するため、同所性頭頸部癌モデルから集積した頸部リンパ節転移能のデータを元に、頭頸部癌頸部リンパ節転移に関する特異的な遺伝子を同定することである。 合計59種類の頭頸部扁平上皮癌細胞株をヌードマウスの舌組織へ移植し同所性頭頸部癌モデルを作製し、その生存率、腫瘍増殖能、ならびに頸部リンパ節転移能についてin vivoにおいて包括的検討をまず行った。各細胞株8~10匹ずつでの検討となる。頸部リンパ節転移能については細胞株移植60日後に頸部リンパ節を摘出し、摘出した頸部リンパ節をホルマリン固定後スライド標本とし、ヘマトキシリン・エオシン染色の後、頸部リンパ節転移の存在を顕微鏡下で検討した。 59種類の同所性頭頸部癌モデルは様々な腫瘍増殖能、頸部リンパ節転移能を示した。細胞株移植後32日の腫瘍容積とマウスの生存日数は非常に強い負の相関関係を示し、両因子とも同所性頭頸部癌モデルにおける腫瘍増殖能の指標となりうると考えられたが、細胞株移植後32日の舌腫瘍容積と頸部リンパ節転移能は弱い相関関係を示したため、頸部リンパ節転移能は腫瘍増殖能以外の因子の関与があると考えた。 舌腫瘍を形成しなかった細胞株では頸部リンパ節転移を認めなかったため、舌腫瘍を80%以上形成する細胞株18株に限定し頸部リンパ節転移能について検討することとした。上記18種類の頭頸部癌細胞株より既にTotal RNAを抽出しており、現在Whole gene micro arrayを行っている途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合計59種類の頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いた同所性頭頸部癌モデルにおける、生存率、腫瘍増殖能、ならびに頸部リンパ節転移能についての包括的検討をまず行った。同検討にやや時間を要したが、現在Whole gene micro arrayを行っている途中であり、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
舌腫瘍を80%以上形成する頭頸部癌細胞株18株の頸部リンパ節転移能と、現在行っているWhole gene micro arrayの結果と照らし合わせ、頭頸部癌の頸部リンパ節転移に特異的に関与する遺伝子、すなわち高頻度に頸部リンパ節転移能を認める細胞株に特異的に発現している遺伝子を同定する。同遺伝子が頸部リンパ節能に直接関与しているかを以下のように検討する。 1.頸部リンパ節能が高い頭頸部癌細胞株を用い、同定した遺伝子発現をノックダウンした頭頸部癌細胞株(A細胞株とする)を新たに作製し、in vitroにおいてA細胞株とコントロール頭頸部癌細胞株(B細胞株とする)でinvasion assayとmigration assayを用いて浸潤能、転移能について比較検討する。2.A細胞株が、B細胞株と比較して浸潤能、転移能の著明な低下を認めた場合、in vivoにおいてA細胞株とB細胞株を用いて同所性頭頸部癌モデルを作製し、両細胞株の頸部リンパ節を比較検討する。3.頸部リンパ節能が低い頭頸部癌細胞株を用い、同定した遺伝子発現をノックインした頭頸部癌細胞株(C細胞株とする)を新たに作製し、in vitroにおいてC細胞株とコントロール頭頸部癌細胞株(D細胞株とする)でinvasion assayとmigration assayを用いて浸潤能、転移能について比較検討する。4.C細胞株が、D細胞株と比較して浸潤能、転移能の著明な上昇を認めた場合、in vivoにおいてC細胞株とD細胞株を用いて同所性頭頸部癌モデルを作製し、両細胞株の頸部リンパ節を比較検討する。 以上について得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
まずWhole gene micro arrayの解析費用が必要となる。同解析は初年度に行う予定であったもので、平成24年度繰越金を当てる。 同解析で頭頸部癌の頸部リンパ節転移に特異的に関与する遺伝子、すなわち高頻度に頸部リンパ節転移能を認める細胞株に特異的に発現している遺伝子を同定後、同定した遺伝子発現をノックダウン、ノックインした頭頸部癌細胞株の作製、同細胞株を用いたinvasion assay、migration assay、また再度同所性頭頸部癌モデルを作製し、in vivoでも検討するため、実験用動物、動物実験器具、細胞培養器具、細胞培養試薬、分子生物学実験器具・試薬のための費用が必要となる。 得られた結果をとりまとめ成果の発表を行うため、国内外学会発表のための旅費が必要となる。また論文発表のため、英文校閲料、論文投稿料が必要となる。
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