合計59種類の頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いて、それぞれ作製した同所性頭頸部癌モデルにおいて腫瘍増殖能、頸部リンパ節転移能について検討した結果、同モデルは様々な腫瘍増殖能、頸部リンパ節転移能を示した。更なる検討のために80%以上舌に腫瘍形成を認め、細胞株移植後32日の平均腫瘍容積が20mm3以上であった15細胞株を選出し、それぞれTotal RNAを抽出し、Whole gene microarrayを施行した。 同結果をもとに主成分分析を施行し、最も異なる特性を持つ転移を70%以上認めた2種の細胞株(転移高形成群)と転移0%であった2種の細胞株(転移無形成群)の二群間において発現変動比(fold change)について検討した結果、14661遺伝子で1.5倍以上の発現量の差を認めた。上記結果をもとに頸部リンパ節転移に関与する転写因子カスケードの上流因子を推測するため、遺伝子カスケード解析(TRANSFACデータベースを用いた転写因子サイト探索解析: upstream analysisと、同結果を利用したキーノード解析による)を施行した結果、AP-1 FamilyであるJunB、FOS、FOSL1等が頭頸部癌の頸部リンパ節転移と強い関連をもつ可能性が高い結果となった。 今後は頭頸部癌における頸部リンパ節転移制御の機序にAP-1 Familyのがどのように関与しているか検討を続けていく予定である。
|