研究課題/領域番号 |
24791799
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
下倉 良太 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90455428)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 実験系心理学 / 解析・評価 / 電子デバイス・機器 / 医療・福祉 |
研究概要 |
本研究は、両耳装用型軟骨伝導補聴器の実用化を目指し、軟骨伝導音による両耳聴効果(方向定位・音声騒音分離)を評価し・試作機に改良を加えることを目的としている。 軟骨伝導補聴器とは耳の軟骨を振動させて音情報を伝える新しい補聴器である。この補聴器は、これまでの気導・骨導とは異なる新しい伝導ルート(軟骨伝導)を利用したものであり、既存補聴器のデメリットを解消しうる画期的な補聴器として期待できる。例えば一般に広く使われている気導補聴器はイヤホンで外耳道を塞ぐため、耳漏のある患者や外耳道閉鎖症の患者は使用できない。それに対して軟骨伝導補聴器は、振動子の形状が外耳道を塞がないリング型であり、軟骨に軽く接触させるだけで振動を伝えることができるので、気導補聴器を使用できない難聴者の補聴に大きく貢献する。 軟骨伝導のもう一つの大きな特徴は、両耳装用に適していることである。一般的な気導補聴器を両耳に装用すると強い耳閉感を利用者に与えてるのに対し、軟骨伝導補聴器は両耳とも開放するので、不快感なく長時間装用できる。この利点を生かし、本研究課題は軟骨伝導より得られる両耳聴効果に焦点を当てている。初年度に当たる24年度は、両耳装用軟骨伝導補聴器をまず補聴器メーカーと共同で開発した。その後、健聴者を対象に、(1)音の方向感が得られるかどうか、(2)騒音下で語音聴取が可能か、という二つの検証を行った。その結果、両耳に入る音の時間差と強度差を調整した音像定位実験では、軟骨伝導でも一般的な気導と変わらない精度で音の方向感が得られることが明らかとなった。また騒音下の語音聴取実験では、同じ音圧の騒音に対して気導よりも軟骨伝導の方が高い精度で語音聴取が可能であった。24年度は、健聴者に対し、軟骨伝導の両耳聴効果の有用性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、両耳装用型軟骨伝導補聴器の実用化を目指し、軟骨伝導音による両耳聴効果(方向定位・音声騒音分離)を評価し・試作機に改良を加えることを目的としている。その中で、24年度は健聴者の方向定位と音声騒音分離について検証し、どちらも一般的な気導補聴器と遜色のない性能を軟骨伝導補聴器は発揮することができると証明した。もし今回の検証で、軟骨伝導で両耳聴が得られないという結果になってしまうと、大幅な補聴器開発・研究内容の方向修正が必要になってしまうが、今回の検証結果から、我々の両耳装用型軟骨伝導補聴器の研究開発の方向性が間違っていなかったことを示唆することができた。これは大変大きな成果であり、25年度以降の研究に順調に移行することができる。よって本研究の達成度を、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、二つの両耳聴効果、つまり方向定位と音声騒音分離について検証すると言明したが、両耳聴効果はそのほかにも、閾値の上昇、語音明瞭度の改善が挙げられる。本研究課題には該当しないものの、24年度の研究成果から軟骨伝導の両耳両効果の有用性に関して大きな手応えを得ているので、閾値の上昇、語音明瞭度の改善についても加えて検討を行う。 上記研究成果をもとに、両耳装用型軟骨伝導補聴器に改良を加え、難聴者に対しても健聴者と同様の両耳聴効果が得られるか検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
補聴器改良のための関連部品の購入を予定している。また実験参加のための被験者謝金の支出を予定している。また24年度の研究成果が蓄積されてきたため、国内外での学会発表参加費とそれらに伴う旅費、さらに学術雑誌投稿のための英文校正費、投稿料を支出する予定である。
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