慢性副鼻腔炎は鼻閉・鼻漏・後鼻漏などの症状が続き、しばしばそれらによって生活の質(Quality of Life)を損ねることも少なくない。鼻・副鼻腔粘膜における炎症性細胞やそれらが産生する炎症性サイトカイン・ケモカインの関わりや治療として使われる抗菌薬・抗アレルギー薬・副腎皮質ステロイド薬の役割について研究代表者らはこれまで明らかにしてきた。本研究は、副鼻腔粘膜におけるmicrobiomeに関し、副鼻腔炎患者と健常者における差を検討し、疾患の早期発見への手がかりを探ることを目的としている。慢性副鼻腔炎患者および健常者の中鼻道自然口ルートを綿棒で擦過して検体を採取し、従来のシーケンス方を用いて検体に含まれる細菌種を同定、microbiomeの比較を行う予定であった。研究代表者が勤務する昭和大学病院での副鼻腔手術は年間約200件以上あり、その中から鼻茸合併例6例、非合併例6例を対象に患者からの検体採取を行うことを予定していた。症例数が豊富なため予定された件対数を得ることは困難なことではないと想定されていた。また、検体処理に関しても研究代表者がこれまでシカゴ大学において数百名の副鼻腔炎患者および健常者から綿棒で検体を採取しDNA抽出に始まる一連の研究を行ってきており、実験によるトラブルは少ないものと見込まれていた。研究代表者はまず昭和大学医の倫理委員会に研究計画を申請し、承認後に研究に必要な物品を購入、検体の採取にとりかかった。採取された検体からDNAを抽出し、16s rRNA が検出されることをPCRにて確認した。次世代シーケンスシステムを用いてmicrobiomeの解析を行い、患者群と健常者群での比較検討を行っている。
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