研究課題/領域番号 |
24791814
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
乾 崇樹 大阪医科大学, 医学部, 助教 (60465614)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 音響性聴覚障害 / 音響負荷モルモット / 細胞内Ca2+イオン濃度 / 内耳組織障害 |
研究概要 |
急性音響性聴覚障害は、強大音曝露により難聴が生じる疾患であり、成因については機械的障害、虚血、神経毒障害、代謝障害、内耳組成液のイオン不均衡、フリーラジカルの関与などが報告されているが、いまだその病態生理については不明な点が多い。本研究では、音響性聴覚障害モデルモルモットを作製し、これを用いてNO合成酵素(NOS)阻害剤、Ca2+依存性プロテアーゼ阻害剤、カルシニューリン阻害剤、フリーラジカルスカベンジャーの投与による治療効果を評価し、音響負荷による聴覚障害の病態解明と新規治療法を開発することを目的とする。 平成24年度は、音響負荷装置の構築と、モルモットを用いた音響性聴覚障害モデルの確立を試み、予備実験を行った。まず、コンピューターからトーンジェネレーターソフトを用いて出力されるノイズ音源のデジタル信号を、D/Aコンバータ、パワーアンプを介してアイソレーションボックス内で再生できるようにセットアップを行った。そしてボックス内に騒音計のマイクロフォン部を留置し、ケーブルを介して連結した本体はボックスの外に配置することで、随時ボックス内の騒音状況を評価できるシステムを構築した。結果として、周囲に大きな騒音を発生させることなく、安定して必要なレベルの音響負荷を行うことが可能となった。 モデル作製の手法としては、2010年にNagasakiらが報告したものと同様に、週齢3週のモルモットを音響負荷装置内のケージに入れ、8hHzを中心としたOctave Band Noise 120 dB SPLで1時間の音響負荷を行った。現段階で、2003年にHiroseらがマウスを用いて報告しているものと同様の蝸牛内直流電位の変動が確認されており、良好なモデルが作製されていると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、初年度に音響性聴覚障害モルモットを確立し、これらにおける音響負荷後の蝸牛内直流電位(EP)、聴性脳幹反応(ABR)、蝸牛神経複合活動電位(CAP)、組織切片を用いた組織障害についての評価を行い、薬剤投与群に対するコントロールデータを得る予定であった。現在はこのうちEPのみ評価を行えている状態である。進行が遅れている理由として、音響負荷装置の構築において、当初購入を予定していたパワードスピーカーの入手が困難となったため、代替製品の選定と調達に時間を要したことと、使用予定であった顕微鏡の老朽化に伴い新規購入が必要であったことが上げられる。
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今後の研究の推進方策 |
申請した研究計画では、平成25年度には前年度に確立した音響性聴覚障害モルモットを用い、NOS阻害剤投与群、プロテアーゼ阻害剤投与群、カルシニューリン阻害剤投与群、フリーラジカルスカベンジャー投与群の4群に分け、コントロール群と同様に音響負荷の7日後に、ABR閾値、CAP閾値、EP値、組織障害の程度を評価する予定であった。しかし前述の如く、平成24年度のコントロール実験に遅れが生じているため、これを加えた研究実験の遂行を平成25年度の修正計画として推進する予定である。当初の計画より必要な実験数は増加するが、実験手順に要する時間が予想よりも短時間で行うことが可能であったため、進行には問題が生じないと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の総額として、次年度使用額の229,230円と、元来の平成25年度の700,000万円から前倒し請求した400,000万円を差し引き、合計で529,230円の予算が計上されている。当初の予算より減少しているが、一部購入予定であった機器の代替となりうるものが所属施設に存在したこと、騒音負荷装置がより安価に作製できたことから、全体としての研究の進行に影響はないと考えている。ただ、研究の進捗状況としては若干の遅れがあるため、費用をまずその部分に充てる予定である。費用は、主に実験に用いるモルモットと薬剤の購入に充てる。
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