中耳手術の際の鼓索神経障害で舌痺れが出現することがあり、鼓索神経と伴走する舌神経障害の一症状としてとらえられている。また舌痛症は現在、病態は解明されていないが知覚閾値の変化については見解が様々である。 今回、我々はモノフィラメント、ディスクリミネーター、電気刺激の三種類の知覚検査を用いて舌痛症の舌粘膜知覚閾値の変化、中耳手術前後の閾値変化を測定、追跡した。前年度までに三種類の検査の正常値を検討し、これらのうちディスクリミネータと電気刺激においては舌粘膜の三叉神経閾値を測定するのに有用性であることが確認できた。またこの二種類の検査で舌痛症患者において閾値上昇、また中耳手術後患者でも閾値上昇することが確認できた。 今年度は舌痛症患者の経過を追跡した。その結果、治療後には自覚症状の改善とともに知覚検査にても閾値低下を確認することができた。これらの結果は舌の知覚閾値測定が舌痛症における重症度、治療効果を判定するのに有用であることを示唆している。また中耳手術後の閾値変化を症状とともに推移を追跡した。知覚障害による痺れは味覚より改善が早く、検査閾値の改善も速やかであった。知覚検査は中耳手術後の鼓索神経障害の程度を反映し、推移をみるのに有用であると考えられた。 上記の検討は舌痛症や中耳手術後の痺れ症状の解明につながっていくことが期待される結果となった。
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