研究課題/領域番号 |
24791823
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
神田 敦宏 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (80342707)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | (プロ)レニン受容体 / プロレニン / レニン・アンジオテンシン系 / 血管新生 / 網膜疾患 |
研究概要 |
老化や生活習慣による炎症・血管新生が原因で引き起こされる網膜疾患[加齢黄斑変性(AMD)や糖尿病網膜症(PDR )など]の罹患者数が近年急増している。申請者らのグループは、レニン-アンジオテンシン系(RAS)と受容体随伴プロレニン系(RAPS)がそれら網膜疾患において重要な役割を担っていることを明らかにした。本研究では、組織発生や疾患における分子病態を制御し、RAPSの鍵分子である (プロ)レニン受容体[(P)RR]の詳細な生理機能解析をはじめとして、生活習慣病発症におけるRAPSおよび機能断片別(P)RRの関与をヒト正常・病態組織やトランスジェニックマウスなど用いて詳細に明らかする。 本年度は、PDRにおける(P)RRの病態形成への関与を検討した。PDR患者より採取された線維血管増殖組織や種々のヒト網膜由来細胞において(P)RR をはじめとする全てのRASコンポーネントが発現していることを確認した。そして,ヒト網膜血管内皮細胞において,プロレニンによる(P)RR刺激でVEGF165発現を促進していることを明らかにした。実際,(P)RRは線維血管増殖組織の血管内皮細胞に発現しており,さらにProreninとVEGFとの共局在を確認した。また硝子体中における可溶型(P)RR濃度を測定したところ,対照群に比べPDR患者においてその発現量は有意に増加していた。また,可溶型(P)RRの発現量は,硝子体中のVEGF発現量さらには増殖組織での血管密度と正の相関が認められた。さらに硝子体中の活性型プロレニン量がVEGF発現量と相関していたことから,眼内における組織RASも血管新生に関与していると考えられた。(P)RRはPDRにおける血管新生,つまり疾患の進行に関与する重要な分子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の計画は、 ①病態および正常組織におけるRAPS関連分子;上記で示したようにPDR患者からの臨床検体を用いた解析により、(P)RRはPDRにおける疾患の進行に関与する重要な分子であることを示した。それら研究成果をまとめ学術論文(Kanda A et al., Diabetologia 2012; Kanda A et al., Br J Ophthalmol. 2013)とした。さらにRASとRAPSに関連する英文総説の作成も行った(Satofuka S, Kanda A et al., Front Biosci. 2012)。 ②断片別(プロ)レニン受容体の機能解明や③網膜発生における(プロ)レニン受容体の関与解明に関しては、yeast two hybridを行うためのヒト網膜cDNAライブラリーの作製が完了し、スクリーニングを開始している。また、コンディショナルノックアウトマウスの、病理組織学的・電気生理学的解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
①病態および正常組織におけるRAPS関連分子;PDRの臨床検体より得られた結果をもとにして、AMDや他の眼疾患におけるRAPSの関与を前年度と同様の手技にて明らかにする。さらに(P)RR共役分子の発現も確認する。 ②断片別(P)RRの機能解明(共役タンパク質の同定);(P)RRと共役するタンパク質の同定は、今後(P)RRの機能を解明する上でもっとも重要なことである。yeast two hybridで得られた共役候補タンパ ク質は、(P)RRと候補タンパクを共発現させた培養細胞もしくは組織ホモジネートを用いた共免疫沈降法にて、(P)RRタンパクとの共役を確認し、詳細な機能解析を展開する。その他、免疫沈降法/MS解析なども合わせて行う。 ③網膜発生における(P)RRの関与解明;これまでの解析で網膜発生初期に(P)RRが重要な役割を担っていることが明らかとなっているため、発生に関連する分子との相互作用などを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に沿って、研究費は順調に使用されている。研究費が一部残存したが、次年度の研究費として繰り越しをおこなった。平成25年度に施行予定の実験費用に使用する予定である。
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