グルタミントランスポーターの1つであるglutamate/aspartate transpoter(GLAST)の機能異常をもつ遺伝子欠損マウスでは、眼圧 が上昇することなく、グルタミン酸濃度上層による網膜神経節細胞死が誘導されることが明らかにされてる。この遺伝子異常はヒト正常眼圧緑内障患者にもみられることから、正常眼圧緑内障モデルの一つと考えられている。緑内障の進行の原因として眼内の酸化ストレスの亢進が疑われており、ここを治療ターゲットとすることにより、眼圧に依存しない新しい緑内障治療を確立できる可能性が考えられる。アスタキサンチン(AST)は、サプリメントとしてすでに安全性が確立されている天然由来のカルチノイドであるが、強い抗酸化作用 と抗炎症作用を持つことが知られている。我々は、この薬剤を正常眼圧緑内障モデル動物であるGLASTノックアウトマウスに投与してその慢性に進行する網膜神経細胞死に対 する抑制効果を明らかにしつつある。AST、10mg/kg/day投与群、30mg/kg/day投与群、60mg/kg/day投与群でいずれも、非投与群に対し て統計学的に有意な細胞死抑制効果を示し、その効果は容量依存的に増加した。AST60mg/kg/dayをGLASTノックアウトマウスに2週間 連続投与して、網膜神経節細胞をカウントしたところ、非投与群に比較して約20%の細胞死抑制効果があることを確認している。また 実際酸化ストレスマーカーを調べることで、網膜内の酸化ストレスがAST投与によって軽減されてることも明らかにしている。さらに細胞死抑制効果にASTの抗炎症作用の関係を検討するため、NF-KBの核内移行について調べたが、その結果はASTの投与でNF-KBに変化はなく、細胞死抑制効果は主にASTの抗酸化作用によって生じていると推測された。
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