研究概要 |
平成24年度の研究により、以下の成果を得た。 1) 脂肪細胞から分泌されるサイトカインであるアディポネクチンの血中濃度の低下と糖尿病網膜症の重症度と関連があるとういう報告があるが、アディポネクチンの網膜血管の直接作用について、詳しく検討されていなかった。そこで今回われわれは、ブタの網膜摘出血管を用いたin vitro実験により、アディポネクチンが濃度依存性に血管拡張作用させることを確認できた。さらにこの血管拡張は、一酸化窒素(NO)合成阻害薬や血管内皮剥離により有意に同程度抑制されたことから、この血管拡張は、内皮から産生されたNOが関与していることが考えられた。 2) アディポネクチンは、アディポネクチン受容体を介し、さまざまな生理作用を有する事から、アディポネクチンだけでなくアディポネクチン受容体も網膜症の病態に関与しているものと考えられる。しかし、網膜血管においてアディポネクチン受容体の存在が確認されていなく、今回、免疫染色にてブタ網膜血管の内皮にアディポネクチン受容体が存在することを確認した。 以上の結果と網膜症早期に網膜血流が低下しているという報告(Nagaoka T et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2010 Dec;51(12):6729-34.)から、網膜症早期において、アディポネクチン濃度を上昇させる薬剤などによる適切な介入により、糖尿病網膜症の発症・進展を予防できる可能性が示唆された、平成25年度の研究により、新しい糖尿病網膜症治療法の開発につなげたいと考えている。
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