研究課題
若手研究(B)
加齢黄斑変性(AMD)は失明疾患の上位にあるが、最新のVEGF抗体投与は比較的良好な結果が報告されている。しかし繰り返しの長期間投与が必要で、終了の時期は全く不明である。今回のテーマは、治療法のテーラーメイド化と投与方法の最適化を目指すことを目的とした。虚血などのストレス応答の中枢に近いhypoxia-inducible factor (HIF)因子結合elementをプロモーターに持つGFP遺伝子を組み込んだ細胞を作成した。細胞は我々の従来の方法で、HIFのcis-elementにEGFP遺伝子を組み込んだベクターを網膜色素上皮細胞株(RPEJ)に導入した。こうして作製した細胞の培養液に眼内液を添加して、EGFP発現を検討した。蛍光写真撮影では判断が難しかったためにreal-time PCRでEGFP発現を検討した。また、今年度は主として糖尿病網膜症などの手術で得られる前房水・硝子体液を処理して比較検討した。眼内液を培地に添加した時に発現するEGFPとVEGF遺伝子発現は正常(白内障患者の前房水、あるいはPBS添加)で強い相関を示した。一方、糖尿病網膜症がある前房水は相関が見られるものの正常よりばらつきが大きく、HIF発現には患者の眼内液間で異なっていることが予想された。これらのことをふまえ、現在使用されているVEGF抗体をはじめとする治療薬がHIFや関連遺伝子発現にどのような影響を与え、薬剤による違いがあるのか解析検討中である。
2: おおむね順調に進展している
①培地中に前房水あるいは硝子体液を添加することでHIF遺伝子発現に影響を与える検討ができる細胞の作製。平成24年度。我々の従来の方法でHIFのcis-elementにEGFP遺伝子を組み込んだベクターを網膜色素上皮細胞株(RPEJ)に導入した。その結果蛍光写真撮影では判断が難しかったためにreal-time PCRでEGFP発現を検討したが、CoCl2を負荷した場合は濃度依存的にEGFP発現が見られた。②患者の前房水・硝子体液の採取・保存。平成24-25年度。東北大学倫理委員会で承認を得ることができた(2015年1月まで)。その後VEGF抗体治療適応と考えられた患者は抗体投与時に同時に採取される前房水を、また硝子体手術等の手術時に眼内液が得られた場合は解析に利用する予定で検討を開始した。白内障手術時の前房水、あるいは黄斑前膜・黄斑円孔手術時の硝子体液はコントロールとして使用した。加齢黄斑変性(AMD)の外来処置時に得られる予定であった前房水は同意が得られ難く、採取が困難であったので、今年度は主として糖尿病網膜症などの手術で得られる前房水・硝子体液を処理して比較検討した。眼内液を培地に添加した時に発現するEGFPとVEGF遺伝子発現は正常(白内障患者の前房水、あるいはPBS添加)で強い相関を示した(R~2; = 0.622)。一方、糖尿病網膜症がある前房水は相関が見られるものの(R~2; = 0.503)正常よりばらつきが大きく、HIF発現には患者の眼内液間で異なっていることが予想された。これらのサンプルは東北大学眼科網膜グループの先生方の協力を得て回収した。動物モデルでの検討の前に培養細胞への負荷でいかに因子が核内へ移行しHIF発現やVEGF発現に影響を与えるか検討した。方法は核内移行蛋白質を回収し正常と負荷間でプロテオミクス解析を行った。現在その結果を解析中である。
①患者のサンプル回収をもう少し継続する。外来患者からの標本採取も継続して検討するが、困難な場合は手術時に得られるサンプルを中心に解析を進める。②前房水の解析のみでなく硝子体の解析も追加し、前房水と同様の傾向があるのか確認する。また、EGFPの発現以外にEGFP発現が支配する下流の遺伝子発現(VEGFなど)も同時に解析する。③今回の解析から、少なくても糖尿病患者間では眼内液にHIF発現に及ぼす影響が違うものが存在する可能性が考えられた。この因子の存在は解析する価値があると思われたため、次年度以降は今年度行ったプロテオミクス解析の結果をもとに、この因子の同定を試みたい。
該当なし
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