• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

抗新生血管治療のテーラーメイド化

研究課題

研究課題/領域番号 24791832
研究機関東北大学

研究代表者

石川 有美 (鴇田 有美)  東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 技術補佐員 (60396439)

キーワード眼医工学
研究概要

加齢黄斑変性(AMD) や糖尿病網膜症は失明疾患の上位にあるが、最新のVEGF抗体投与は比較的良好な結果が報告されている。しかし繰り返しの長期間投与が必要で、終了の時期は全く不明である。今回のテーマは、治療法のテーラーメイド化と投与方法の最適化、並びにVEGF刺激因子を検討することを目的とした。虚血などのストレス応答の中枢に近いhypoxia-inducible factor (HIF)因子結合elementをプロモーターに持つGFP遺伝子を組み込んだ細胞を作成し、この細胞の培養液に眼内液を添加してGFP発現を調べた。それにより臨床像と比較し治療継続や終了の可能性を示すことができるのかを検討したが、HIF発現には患者の眼内液で異なっていることが予想された。この患者眼内液を利用してEGFP遺伝子発現刺激検討をPCRで検討したが、患者間で変化があり、コントロールとして用いた糖尿病の病態間で有意差があった。さらに現在使用されているVEGF抗体をはじめとする治療薬が、HIFや関連遺伝子発現にどのような影響を与えるのか、あるいはVEGF発現刺激因子が他に存在するのかラットとヒトの網膜色素上皮細胞(RPE)を利用して検討した。このRPEにはHIFに誘導されるEGFP遺伝子が発現されるベクターを組み込んだものも用いた。方法としてはRPEを通常培養、低酸素培養、低酸素培養とさらにグルコース除去培養を行い、最もVEGF発現が増強される低酸素培養+グルコース除去培養の結果をその他の群と比較し、プロテオミクス解析を利用して、VEGF発現に影響を与える因子を解析した。その結果、既知の遺伝子ファミリーの存在が重要な役割を担っていることが推測されたため、現在real-time PCRとウエスタンブロッティングで追加解析中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

①平成24年度 培地中に前房水あるいは硝子体液を添加することでHIF遺伝子発現に影響を与える検討ができる細胞の作製。我々の従来の方法でHIFのcis-elementにEGFP遺伝子を組み込んだベクターを網膜色素上皮細胞株(RPEJ)に導入した。その結果、蛍光写真撮影では判断が難しかったためにreal-time PCRでEGFP発現を検討したが、CoCl2を負荷した場合は濃度依存的にEGFP発現が見られた。
②平成24-25年度 患者の前房水・硝子体液の採取・保存  東北大学倫理委員会で承認を得ることができた(2015年1月まで)。その後VEGF抗体治療の適応と考えられた患者はVEGF抗体投与時に同時に採取される前房水を、また硝子体手術等の手術時に眼内液が得られた場合は解析に利用する予定で検討を開始した。24年度は主として糖尿病網膜症などの手術で得られる前房水・硝子体液を処理して、比較・検討した。眼内液を培地に添加した時に発現するEGFPとVEGF遺伝子発現は正常(白内障患者の前房水、あるいはPBS添加)で強い相関を示した(R² = 0.6218)。一方、糖尿病網膜症がある前房水は相関が見られるものの(R² = 0.5032)正常よりばらつきが大きく、HIF発現には患者の眼内液間で異なっていることが予想された。これらのサンプルは東北大学眼科網膜グループの先生方の協力を得て回収した。まず培養細胞への負荷でどのような因子が核内へ移行し、HIF発現やVEGF発現に影響を与えるか検討した。方法は核内移行蛋白質を回収し、正常と負荷間でプロテオミクス解析を行った。解析によって取り上げられた未知の因子がどんなものであるかを、現在解析中である。

今後の研究の推進方策

〈今後の推進方策〉
前年度は、VEGF発現に関与するEGFPの発現の程度を調べた。そのEGFPの発現はHIFによりコントロールされていることもわかったが、反面、VEGFがHIF以外の因子によっても発現がコントロールされる可能性のあることがわかった。そして、今年度はそのVEGFの発現に関与するHIF以外のファクターが何かあるかどうかを中心に検討した。方法としては、HIFがVEGFを発現させるとされる低酸素状態で、確かに、VEGFとHIFの発現は(EGFPの発現は)比例していた。しかし、この低酸素培養に、グルコースを減少させる負荷を加えると、HIFの発現に比例しないVEGFの発現があることが疑われ、HIFに関係する、関係しないVEGFの発現をこの2つの系を使って比較した。具体的にはプロテオミクスを用いて、この2つの条件の間でどのようなタンパク質の発現が違うのかを解析した。現在、このタンパク質はXと名づけられるが、さらに遺伝子解析などで検討中である。このXはファミリータンパクを形成していることが知られており、そのうちの一部は新生血管などにかかわる、VEGFの発現に関与していることがこれまでにも報告されているために、現在、このXとVEGF発現の関係を検討中である。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度には低酸素培養とその解析の一部を委託し再現性を見る予定であったが、条件が合わなかったため、未使用額が生じた。
低酸素培養委託と、細胞培養や遺伝子解析の消耗品として、次年度分と併せて使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Intrascleral Transplantation of a Collagen Sheet with Cultured Brain-Derived Neurotrophic Factor Expressing Cells Partially Rescues the Retina from Damage due to Acute High Intraocular Pressure.2014

    • 著者名/発表者名
      Abe T, Tokita-Ishikawa Y, Onami H, Katsukura Y, Kaji H, Nishizawa M, Nagai N.
    • 雑誌名

      Adv Exp Med Biol

      巻: 801 ページ: 837-843

    • DOI

      10.1007/978-1-4614-3209-8_105.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A polymeric device for controlled transscleral multi-drug delivery to the posterior segment of the eye2014

    • 著者名/発表者名
      Nagai N, Kaji H, Onami H, Ishikawa Y, Nishizawa M, Osumi N, Nakazawa T, Abe T.
    • 雑誌名

      Acta Biomater

      巻: 10(2) ページ: 680-687

    • DOI

      10.1016/j.actbio.2013.11.004.

    • 査読あり
  • [学会発表] Protective Effects of Transscleral Drug Delivery Device Against Photoreceptor Cell Death in S334ter Rhodopsin Mutant Rats2013

    • 著者名/発表者名
      Nagai N, Kaji H, Onami H, Yamada T, Katsukura Y, Ishikawa Y, Nishizawa M, Mashima Y, Abe T.
    • 学会等名
      ARVO annual meeting
    • 発表場所
      Seattle, Washington,USA
    • 年月日
      20130505-20130509

URL: 

公開日: 2015-05-28   更新日: 2015-06-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi