研究概要 |
近年、ムコスタなどのドライアイに対する新薬が投入されるなど治療の選択肢が拡大しているが、ドライアイに対する評価系は少ない。本研究では上皮が分泌するムチンについて着目し、評価系モデルの構築を試みた。米国輸入角膜より角膜輪部を採取し、細胞を分散させた。特注にて作成された住友べークライト社製 低級着セルデスクLFに1000個/wellの細胞密度で播種し、一晩放置後洗浄することで、高付着能を持つ幹細胞を単離できた。DMEM-F12 基礎培地にB-27 SupplementとEpidermal growth factor(EGF)を添加し一週間培養することで幹細胞由来単一コロニーの細胞群を作成できた。これらのコロニーはムチンを染色できるPAS染色に陽性であり、幹細胞由来コロニーがムチンを分泌することが判明した。これらの培養系にEGFによる増殖経路の一つであるERK1,2の関与を各種阻害剤を用いて検証した。ERK1,2を阻害することで知られるFR1800204を用いることにより、コントールと比較して有意にPAS染色像の希薄化が認められ、ERK1,2の阻害により角膜上皮幹細胞のムチン産生が抑制できる。その一方でEGFによる細胞増殖は阻害しない。ERK1,2とともにERK-5を阻害できる、U0126を使用することで細胞増殖は完全に抑制できた。またERK-5のみを阻害できるBIXを使用したサンプルは細胞増殖が可能であり、ERK1,2とERK5の両方を抑えることが細胞増殖の阻害が可能てあった。これらのことより、FR1800204をもちいることで、ERK1,2を阻害することにより、細胞の増殖は阻害せず、ムチン発現を抑制できることが明らかとなり、新規のドライアイモデルとして期待できる。
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