加齢黄斑変性(AMD)は脈絡膜新生血管(CNV)からの滲出液や出血により、黄斑部網膜が不可逆的障害を受け視力低下をきたす疾患であり、その病態には自己抗体の病変部の沈着による炎症の関与が示唆されている。 そこで、マイクロアレイ法にてヒトAMD患者血清中IgG・IgM抗体の網膜組織蛋白に対する反応性を網羅的に解析することにより、抗網膜自己抗体バイオマーカーを同定した。CNVを有するwetAMD患者は、pyruvate kinase M2(PKM2)、complement C4、C9、ApoE、グルタミン合成酵素などに対し、強い血清免疫反応を示した。中でもC4に対するIgG抗体を有する患者は、CNV発症に関して非常に高いリスクを示した(オッズ比44.3)。 次に、CNV病変の主座である脈絡膜組織蛋白に対する血清免疫反応性を2次元電気泳動で確認し、自己抗原をマススペクトル解析にて同定したところ、wetAMD患者は、Krt15、emerinなどに対するIgG抗体を有していることが確認された。 また、ヒトAMD患者血清とlaser induced CNVマウスともに、PKM2に対する高いIgG抗体価が認められたため、その発現をマウスモデルにて検討したところ、mRNA・蛋白レベルともCNV部位における著明な発現増加が確認された。その他、complement C3やIgGの沈着増強も認められたことより、自己免疫反応のCNV形成への関与が示唆された。しかしながら、PKM2を免疫し抗PKM2抗体を産生したマウスにおいて、局所炎症は認められたもののCNVは生じなかったことより、抗PKM2抗体はwetAMD発症後に生じた2次的産物である可能性や、発症における他因子の関与の必要性も考えられた。
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