研究課題/領域番号 |
24791848
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
荻野 顕 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70622629)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 網膜静脈閉塞症 |
研究概要 |
42例の発症後早期の網膜静脈分枝閉塞症患者を、OCTを用いて観察すると35眼に漿液性網膜剥離を認め、うち18眼に網膜下出血を伴うことが確認された。この網膜下出血の存在は、発症時の視力には影響を与えないが、最終視力と相関することが示された。網膜下出血が存在した眼においては、中心窩の視細胞へのダメージが大きいことがOCTから判明している。 従来のOCTでは網膜静脈閉塞症の多量の網膜出血のために、レーザー光が網膜深部方向へ到達しなかったが、最新のOCTと撮影方法を工夫することで、中心窩の網膜剥離の存在、視細胞の状態を検出することができ、視機能の予後を予測することができた。 また、網膜静脈閉塞症と同じ網膜疾患の加齢黄斑変性23眼において、抗VEGF薬で1年間科料を行った。視力は不変であったが、術後3ヶ月では網膜形態は改善し、同時に黄斑部局所網膜電図で測定した黄斑機能は改善を認めた。またその効果は1年を通じて、維持されていた。VEGFには神経保護効果があることが報告されており、VEGFを長期にわたってブロックすることは、神経網膜への悪影響を与える可能性が懸念されているが、今回の網膜電図の結果からは1年間の抗VEGF療法による悪影響は明らかでなかった。通常臨床で用いられる視力検査では、黄斑部に広く病変が広がる加齢黄斑変性や網膜静脈閉塞症では治療効果を十分に評価できないことがあり、その場合に黄斑部局所網膜電図は有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1として、「現在SS-OCTの試作機は、患者の眼を撮影できるまで完成しているため、治療前の網膜静脈閉塞症患者をこの試作機および従来のspectral domain OCTの両方で撮影し、網膜出血に覆われた部位での網膜外層の描出の差異を比較し、SS-OCTの優位性を証明する。」としてきたが、spectral domain OCTの撮影をenhanced depth imaging法を用いることでSS-OCTと遜色なく、網膜静脈閉塞症の視細胞観察が可能となり、Muraoka et al. Branch retinal vein occlusion-associated subretinal hemorrhage.Jpn J Ophthalmol. 2013の報告となった。 研究2として、「網膜静脈分枝閉塞症の黄斑部局所網膜電図と視力予後については、すでに報告しているが、網膜中心静脈閉塞症において、蓄積中のデータについて期間内に報告する。」としていたが、現在データをとりまとめ中である。 研究4として、「抗VEGF薬を網膜静脈閉塞症に投与し、12カ月後の視力と術前のSS-OCT所見、黄斑局所網膜電図の所見との相関を明らかにする。」については、加齢黄斑変性に対し評価を行って、現在論文投稿中(Invest Ophthalmol Vis Sci in revision)である。 研究3として、「黄斑部局所網膜電図記録装置に既存のeye tracking systemをセットアップし、動作確認を行う。」としていたが、こちらについては電極の改良のみを行い現在使用中である。
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今後の研究の推進方策 |
物品の購入、データの収集は完了しており、学会報告および論文作成を今年度中に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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