研究課題
Nrf2 KOマウスでは、外来異物や酸化ストレスに対する感受性の亢進、免疫系の異常、神経変性に対する感受性亢進などが引き起こされる。本研究の目的は、角膜上皮再生時におけるNrf2を介した酸化ストレス防御機構の関与を明らかにすることである。角膜上皮創傷モデルを作製し、上皮剥離後0-72時間に前眼部写真を撮影し、角膜上皮の創傷治癒面積を定量した。その結果、WTマウスでの創傷治癒は約48時間で完全に治癒していたのに対してNrf2 KOマウスでは創傷24‐48時間でWTと比較して有意に創傷治癒が遅延していた。また、WTの角膜上皮のNrf2の免疫染色により、Nrf2は核内移行し、活性化が起きていることが示された。Nrf2を介した酸化ストレス防御機構は角膜上皮の再生過程に関与していることが示されたため、その作用機序に関する解析を進めた。まず、siRNAによるNrf2もしくはKeap1発現のノックダウンを培養角膜上皮細胞株にて検討したところ、いずれも70-80%程度のmRNA発現の抑制および、Nrf2下流遺伝子のNQO-1発現の有意な抑制と上昇を確認した。Nrf2もしくはKeap1のノックダウンの角膜上皮細胞の増殖と遊走への影響を検討したところ、Nrf2発現のノックダウンにより細胞遊走能は有意に低下し、逆にKeap1のノックダウン(Nrf2活性化)により、細胞遊走能は有意に上昇した。一方で、Nrf2およびKeap1のノックダウンはいずれも細胞増殖への影響は限定的であった。これらのことから、Nrf2は角膜上皮の細胞遊走能に影響し、角膜創傷治癒に関与していることが示された。さらに、Nrf2ノックダウンによりdeltaNp63やp75NTRの発現低下が示唆された。以上の結果より、Nrf2活性化は細胞遊走能と幹細胞性能への影響を介して、角膜上皮再生に寄与したと考えられる。現在までの研究成果について、学術雑誌「Free Radic Biol Med」2013年4月に論文発表し、2013年4月の日本眼科学会および2013年5月の米国眼科学会にて発表を行った。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件)
Free Radic Biol Med
巻: 61C ページ: 333-342