研究課題/領域番号 |
24791853
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西田 健太郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (70624229)
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キーワード | 人工視覚 / 賦活化 / 電気刺激 / 脳神経 |
研究概要 |
本研究は、難治性眼疾患である網膜色素変性に対する網膜刺激型(STS)及び視神経刺激型(AV-DONE)人工視覚による治療が、視覚中枢及び反対眼に及ぼす神経賦活化作用を確認し、これを用いた新しい治療法の可能性を検討するものである。当初の予定通り、平成25年度は、平成24年度に確立した観測系と刺激系を、視細胞障害モデルのRCSラットに埋植を行い、3か月間の慢性通電に成功した。 これとは別に、RCSラットの上丘の組織切片を作成し、神経賦活化に関連していると予想されるFGFとBDNFの免疫染色を行った。 RCSラットに、AV-DONEの刺激電極を視神経に埋植し、頭部のコネクターに接続した。このコネクターはプラスチック製の保護カバーがついており、必要時に電気刺激が行えるようにした。また、視路の機能評価のために、視覚野での誘発電位を測定するために、視覚野にステンレス製のネジ電極を、また十字縫合から後方に12mmに参照電極を埋植し、これも頭部のコネクターに接続し、必要時に脳波を測定できるように設置した。埋植直後から3ヶ月後まで、AV-DONEの刺激電極からの電気刺激による脳での誘発電位(EEP)、光による脳での誘発電位(VEP)、光による網膜での誘発電位(ERG)の測定も同様に行うことができた。これと並行して、1週間ごとに慢性の通電を行った。通電の条件は、臨床試験で用いているBiphasic pulseのcathodic first、duration250μs、インターパルス0μs、電流値50μA、周波数160Hzを用いた。 免疫染色は、RCSラットを4%パラフォルムアルデヒドで灌流固定し、後固定を行った後、30%シュクロース液で脱水し、包埋後、上丘を含む凍結切片を作成した。その後、型どおりにFGF、BDNFの免疫染色を行った。個体数は少ないが、良好な免疫染色像が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、まず視細胞変性モデルとして、小動物であるため中枢神経系の評価が行いやすいRCSラットを用いることとした。また、中枢系や反対眼に電気刺激による影響を起こすとすれば、網膜刺激型(STS)よりも視神経刺激型(AV-DONE)の方が可能性は高いと考え、まずAV-DONEを埋植することとした。平成24年度に家兎で確立した刺激系、及び機能評価を行うための観測系を、RCSラットに埋植した。当初はラットによる埋植装置の破壊がおこり、刺激および観測が困難であったが、飼育部屋の工夫により、長期間での刺激系、および観測系を樹立することができた。また、埋植後3カ月まで電気刺激による脳での誘発電位を観測することができた。 これとは別に、RCSラットの脳切片を作成し、通電による神経賦活化に関連しているFGFとBDNFの免疫染色を行った。 今年度の当初の予定とは異なるが、電気刺激方式を絞り込むことで、当初の目的である通電による神経賦活化を評価する評価方法と、対象となる視細胞障害モデルを作成することができ、計画よりは遅れているものの、内容としては概ね計画通り進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果により、慢性の視細胞障害モデルに対して、人工視覚を埋植し慢性通電ができ、また、神経賦活化に関連していると思われるタンパクの免疫染色(FGF、BDNF)もできていることから、今後、電気刺激を行う動物の数を増やし、また、その他の候補になるタンパクの免疫染色も行っていき、神経賦活化の有無を明らかにし、神経賦活化に作用しているタンパクを同定する。 さらに神経賦活化で作用しているタンパクが同定できれば、通電条件は一定として、通電時間を1~3時間と変化させ、最もタンパクが分泌される通電条件の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、人工視覚方式としては、脈絡膜上経網膜電気刺激方式と視神経乳頭刺激方式の2つを実施する予定としていたが、両方式を並行して行うことが困難であったため、視神経乳頭刺激方式に絞って実験を行った。その結果、次年度使用額が生じた。 また当初の計画では、複数の一次抗体を用いて、多数の個体で免疫染色を行う予定であったが、それが出来なかったこともあり、次年度使用額が生じた。 今後は、視神経乳頭刺激方式に絞って通電個体数を増やし、実験を加速させる。具体的には、神経賦活化に関連していると思われるタンパクを同定するために、免疫染色を実施し、確定するために追試を行う。また、同定できたタンパクの分泌が最も効率的な刺激条件を検討する。 また、本研究の実験結果を、英文雑誌や学会にて積極的に発表して発信していく。
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