研究課題/領域番号 |
24791854
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
楠原 仙太郎 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40437463)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | MRP4 / ABCトランスポーター / 網膜 / 血管新生 / 周皮細胞 / cAMP |
研究概要 |
Multidrug resistance protein 4 (MRP4)は膜タンパク質であり、環状ヌクレオチドを含む様々な生理物質の能動輸送を介してそれらの恒常性維持に貢献している。そこで我々は網膜血管形成過程でのMRP4の役割をin vivoで調べた。 1. 研究内容: Mrp4ノックアウト(KO)マウスと細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)の誘導物質であるフォルスコリン(FSK)を用いた実験を行い以下の結果が得られた。(1)新生仔マウスの網膜血管形成を免疫染色で調べたところ、Mrp4KOマウスは正常な網膜血管形成を示した。(2) FSK腹腔内注射後、Mrp4-/-マウス網膜における総血管長、血管分岐数、血管密度、tip細胞数はWTマウスと比較して有意に減少していた。(3) Mrp4-/-マウスでは網膜血管先端部でKi67陽性血管内皮細胞数は、WTマウスと比較して有意に増加していた。また、cleaved caspase3陽性血管内皮細胞数は中心網膜で有意に増加していた。(4) FSK投与後のMrp4-/-マウスでは中心網膜において周皮細胞の被覆率低下とempty sleeve数の増加が共に認められた。(5)酸素誘発血管閉塞モデルでは、Mrp4-/-マウスではWTと比較して非血管領域の範囲は有意に増加していた。(6) FSK投与後のMrp4-/-マウスではα-SMA陽性血管内皮細胞は動脈と静脈の両方に分布していた。 2. 研究の意義: 実験結果からMrp4は細胞内cAMP濃度上昇に伴う網膜血管の増殖・アポトーシス、不安定化、動脈化を制御することにより正常な網膜血管形成に関与していると推測される。 3. 研究の重要性: 生後の生理的網膜血管形成と病的血管新生は類似するメカニズムをもつことから、Mrp4機能不全を防ぐことが網膜血管障害に対する治療的アプローチとなるかもしれない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画予定していたMrp4ノックアウトマウスにおける網膜血管の表現型の解析は、(1) Mrp4の生理的網膜血管新生における役割を明らかにする、(2)Mrp4のcAMP細胞外排出作用が網膜血管新生に与える影響を明らかにする、ことであり、これらはすべて達成されている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に沿って、Mrp4の網膜血管新生に及ぼす影響につき、そのメカニズムを疾患モデルを含めて明らかにするための実験を進めていく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の研究が予定通りに進んだことから経費については交付申請どおりの使用を計画している。
|