研究課題/領域番号 |
24791854
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
楠原 仙太郎 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40437463)
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キーワード | Mrp4 / ABCトランスポーター / 網膜 / 血管新生 / 酸素誘発網膜症モデル |
研究概要 |
平成24年度の研究結果からMultidrug resistance protein 4 (Mrp4)が生理的網膜血管新生に重要な役割を果たしていることが示唆された。従って、平成25年度は病的血管新生モデルにおけるMrp4の役割につきMrp4ノックアウトマウスを用いて調べることとした。 1. 研究内容: 病的網膜血管新生モデルとして 酸素誘発網膜症モデルを用いた。生後7日の新生仔マウスを5日間75%酸素濃度のチャンバーで飼育し、その後、通常空気下で5日間飼育した。生後17日目で眼球を摘出したところ、Mrp4ノックアウトマウスでは野生型マウスに比較して有意な頻度と程度で硝子体出血が生じていた。免疫組織染色では、野生型に比べてMrp4ノックアウトマウスで有意な異常網膜血管新生が認められた。なお、もう一つの病的網膜血管新生モデルとしてレーザー誘発網膜静脈閉塞モデルを評価中である。 2. 研究の意義: 本研究結果からMrp4は眼における病的血管新生を抑制する働きがあると推測される。 3. 研究の重要性: 酸素誘発網膜症モデルは主要な我が国の主要な失明原因疾患である未熟児網膜症、増殖糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、と類似するメカニズムをもつことから、Mrp4機能不全に注目した診断的・治療的アプローチが失明の予防につながる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度以降の研究計画で予定していた、 「3) Mrp4の網膜血管新生に及ぼす影響につき、そのメカニズムを明らかにする」については、平成24年度の研究で得られたフォルスコリン投与下での生理的網膜血管新生の表現型が特殊であり、既報のどのノックアウトマウスの表現型とも異なっていたことから複雑なメカニズムの存在が推測され、「4) 網膜血管新生におけるMrp4の関与つき疾患モデルで明らかにする」を優先して実験を進めた。こちらについては、酸素誘発網膜症モデルを用いて計画が達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に沿って、Mrp4の網膜血管新生に及ぼす影響につき、Streptozotocin(STZ)投与による1型糖尿病モデルにおける網膜血管の表現型の解析を中心に実験を進めていく予定である。研究が順調に進めば、Mrp4がどのように網膜血管新生に影響を及ぼすかについて、そのメカニズムを調べていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はMrp4の病的網膜血管新生における役割を明らかにするために実験を行ってきた。酸素誘発網膜症モデルではMrp4ノックアウトマウスで予想外に硝子体出血が多いという表現型が認められたためにこちらの評価に傾注した。従って、もう一方の実験に費用がかかる糖尿病モデルでの解析が後回しとなり次年度使用額が生じる原因となった。 平成26年度は、ストレプトゾトシン誘発1型糖尿病モデルを用いて、Mrp4の糖尿病網膜症における役割を解析する予定である。具体的には、Mrp4ノックアウトマウスに糖尿病を発症させ、発症後3ヶ月時点における網膜組織の変化(血管内皮細胞、周皮細胞、グリア細胞、神経細胞)について免疫組織染色で評価を行う。
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