研究課題/領域番号 |
24791861
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
中野 聡子 大分大学, 医学部, 医員 (20593809)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | キーワード1 |
研究概要 |
Toll様受容体を介する自然免疫賦活化シグナルの伝達経路において、TAX1BP1はNF-κB過剰活性化と、それに伴う各種炎症病態を抑制する新規制御因子である。その共役因子であるA20の遺伝子多型は関節リウマチなどの自己免疫疾患、炎症性疾患に関連することが知られており、TAX1BP1の遺伝子型も炎症病態に影響を与える可能性が示唆されている。我々は、新規NF-κB制御不全モデル動物であるTAX1BP1欠損マウスを作出し、慢性的に全身性炎症反応が亢進していることと、エンドトキシン誘発ぶどう膜炎(EIU)が遷延化することを証明した。使用したTAX1BP1-KOマウスは129/Sv背景であった。EIUの臨床像は、生物種ごとに異なることが知られており、ラットでは前部ブドウ膜が強く一峰性の経過をたどるのに対し、マウスでは前房炎症は軽度で後眼部の炎症が強く二峰性の経過をたどる。マウスの系統毎でも臨床像が異なり、129/Svマウスの免疫反応は未熟な場合があるとされ、その結果はC57/BL6背景にbackcross後に再確認をすることが望ましい。今回我々は、C57/BL6およびLPS高感受性C3H/HeN背景に戻し交配を行い、C57/BL6背景は12世代目のTAX1BP1(+/+)、C3H/HeN背景は10世代目のTAX1BP1(+/-)マウスを得た。C57/BL6背景マウスを用いて、129/Sv背景マウスと同様にEIUが遷延化することを確認した。C3H/HeN背景マウスが12世代目まで進み次第、C57/BL6背景マウスと合わせて、詳細な眼病変の評価を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エンドトキシン誘発ぶどう膜炎(EIU)は、マウスの系統毎に臨床像が異なるため、129/Sv背景から、一般的にEIU評価に用いられているC57/BL6およびLPS高感受性C3H/HeN背景に戻し交配を行なった。TAX1BP1欠損マウスはNF-κB制御不全のため全身性に炎症反応が亢進しているため、出産効率が悪く、若年での突然死が多い。そのため通常の戻し交配より時間がかかり、現在C57/BL6背景は戻し交配が完了したが、C3H/HeN背景は10世代目のTAX1BP1(+/-)マウスが得られた状態である。C57/BL6背景での予備実験は終了しているため、C3H/HeN背景の戻し交配が完了次第、あわせて詳細な眼病変の評価を行なう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
C3H/HeN背景の戻し交配に時間を要したため、詳細なエンドトキシン誘発ぶどう膜炎(EIU)の評価は、次年度のC3H/HeN背景戻し交配完了後に、C57/BL6背景とともに行なう予定である。TAX1BP1-KOマウスにEIUを惹起し、眼内の遺伝子発現変化を網羅的に解析し、病理学的裏付けを伴う臨床所見評価を行うことで、眼自然免疫系におけるTAX1BP1の役割を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
C3H/HeN背景の戻し交配に時間を要したため、平成24年度交付分に未使用額が発生した。C3H/HeN背景の戻し交配が完了すれば、C57/BL6背景およびC3H/HeN背景のTAX1BP1-KOマウスにエンドトキシン誘発ぶどう膜炎(EIU)を惹起し、下記評価を行ない、野生型マウスと比較する計画である。 1.前房水中炎症細胞数・蛋白濃度・サイトカイン多項目同時測定を行なう。 2.Tax1bp1が高発現していた虹彩・毛様体についてマイクロアレイ解析を行なう。 3.マイクロアレイで著変した遺伝子について、リアルタイムPCR、免疫組織染色による検証を行なう。 4.電子顕微鏡で比較することで、Tax1bp1欠損がもたらす浸潤炎症細胞の相違・病態を詳細に観察する
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