研究課題/領域番号 |
24791867
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
加藤 亜紀 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60405157)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 加齢黄斑変性 / 黄斑部萎縮 / 網膜色素上皮 / 単層シート / 免疫染色 / 電子顕微鏡 / ウェスタンブロット |
研究概要 |
1.ヒト網膜色素上皮の培養:ヒト網膜色素上皮細胞は、販売目的で海外の研究所において人眼から分離・培養し、国内のメーカーが輸入したものを用いた。継代し、一部を凍結、加齢眼由来のリポフスチンの影響を排除する目的で継代4代目以降おもに、5代目6代目の網膜色素上皮細胞を研究に使用した。培地は一般的に上皮細胞の増殖に用いられるF10培地にL-グルタミン、抗生剤、10%の血清を加えたものを用い増殖因子や分化誘導因子などは添加しなかった。 2.網膜色素上皮細胞の単層シート作成:1平方センチメートルあたり100万から200万の様々な密度で細胞を培養し、光学顕微鏡で経時的に観察した。非常に数が多いため、多少のばらつきは避けられず、一定の見解を得ることは困難であったが、おおむね100万個あたりの細胞数で安定した単層上皮シートの作成が可能であった。 また、電子顕微鏡のサンプル、免疫染色用のサンプルなど用途に応じたサンプルを採取するために、様々な、大きさ、形、培養皿の表面加工で、シートの作成が可能かどうかを検討した。その結果、大きすぎる培養皿は不適であった。また、表面が、コラーゲンなどでコーティングしてある培養皿も不適であった。 3.電子顕微鏡による観察:培養したシートを採取し、シートの状態を保持したままで走査型顕微鏡によりシートの表面(培養液と接している側)あるいは裏面(培養皿と接していた側)の観察を行い、ブルッフ膜様の構造物、ドルーゼンやリポ蛋白などの分泌物が存在することを確認した。また透過型顕微鏡で、タイトジャンクションが培養網膜色素上皮単層シートの細胞間でも存在することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は研究目的の「1)網膜色素上皮を培養し単層上皮シートが得られることを確認」の達成が可能であった。 また、「5)走査型電子顕微鏡を用いて、経時的に細胞及び膜構造を解析」の達成も可能であった。さらに、透過型顕微鏡に詳しい研究支援員の協力により透過型顕微鏡でのシートの観察ができた。 「2)作成したシートの網膜色素上皮としての細胞活性、上皮としての分化をタンパク質マーカーで免疫組織学的な検討」、「3)表層に形成するブルッフ膜様構造物について、1型、4型コラーゲン、弾性線維などの構成成分の局在」、「4)排泄されるリポ蛋白について、ApoE、ApoB-100など特徴的なアポリポ蛋白の同定を行う。補体H因子、アミロイドβなど、加齢黄斑変性への関与が示唆されている主要タンパク質について、免疫組織学的に検討」など、生理活性に対する評価はやや遅れているが、現在進行中である。 これらを達成した上で「6)シート委嘱に向けての検討」は少し先になると思われるが、目標はおおむね達成されていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
予定の計画より遅れ気味である、免疫染色による網膜色素上皮の分化マーカー(RPE-65、アクチン、サイトケラチン、ベストロフィン)の発現、あるいはZO-1, オクルーディンなどタイトジャンクションを構成する蛋白の発現を確認する。合わせてこれらのタンパク質のウェスタンブロットを施行する。 また、ブルッフ膜の構成成分である1型コラーゲン、4型コラーゲン、エラスチンの局在を免疫染色あるいはウェスタンブロットで検討する。さらに、網膜色素上皮単層シート表面に認める排泄物の中のリポ蛋白に関して、走査型電子顕微鏡を用いて形態を観察するとともに、免疫組織学的にも主要蛋白の同定、apoE、apoB-100などのアポリポ蛋白の、発現、局在を調べる。 生体における、ドルーゼンの網膜色素上皮単層シート表面のドルーゼン様の沈着物の有無を検討する。沈着物が存在した場合には、ヒトのドルーゼンにおいて内外に認める主要タンパク質(ビトロネクチン、apoE、補体H因子、アミロイドβなど)が発現しているか免疫組織学的検討を行う。さらにウェスタンブロットで発現を確認する。 これら免疫生化学的な手法での検討を進めるために、さらなる,シートの作成、至適条件の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の研究を遂行するために、繰越金に関しては、細胞培養の試薬および培養器具、細胞購入の費用にあてる。 また、計画中の免疫染色、ウェスタンブロットなどに必要な実験試薬として一次抗体、二次抗体、微量サイトカイン測定試薬、その他の免疫染色用試薬の購入を予定している。
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